IMG 3439 【トークイベント「I am フォトジャーナリスト」が終了しました】 【トークイベント「I am フォトジャーナリスト」が終了しました】
左から、小野寺翔太朗さん、小松、川嶋久人さん。森祐一さん(ジャーナリスト)撮影。

5月16日、武蔵野プレイス(JR中央線・武蔵境駅近く)にて、40名近いお客様にご来場いただき、川嶋久人、小野寺翔太朗、小松由佳の三人のフォトジャーナリストによるトークイベント、「I am フォトジャーナリスト」を開催いたしました。

それぞれの取材現場の状況だけでなく、取材する側であるフォトジャーナリストとしての思いや現状についても、もっと知っていただきたい、という思いから企画したこの手作りイベント。イベントタイトルの決定から、会場探し、チラシ作りなど、皆でゼロから作り上げた、かけがえのない経験でした。

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次男サラームを預かってもらうはずだった夫と、その日の午後から連絡が取れなくなり(涙)、急遽、サラームも会場へ!長男サーメルと次男サラームにも、受付業務を手伝ってもらった。一緒にお手伝いいただいたIさん、子供たちが落ち着かず、大変ご迷惑をおかけしました。森祐一さん(ジャーナリスト)撮影。
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イベントでは、1000円の参加費に加え、カンパも集めさせていただいた。子供たちが描いた、カンパ募集の紙。

まず、小松、小野寺、川嶋の順で、30〜40分近いお話をそれぞれ行い、取材現場でのエピソードを紹介しました。

小松は、「シリア難民を見つめた13年 〜私が見たもの、考えたこと、これからも見つめ続けるもの〜」というテーマでお話を。2011年以降、内戦状態となる前のシリアで出会ったものや、その後、多くの難民が生まれたシリア。そして難民となった人々がどのように異郷で生きてきたのか。さらに2024年12月のアサド政権崩壊後のシリアの取材について語りました。ドキュメンタリーフォトグラファーとして生きたいと考え、独学で学び始めた頃に耳にした、二人の恩師による忘れられない言葉についてもご紹介しました。

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小松によるトークの様子。写真は、お客様撮影。

そして次は、小野寺さんによるプレゼンテーション。今はなき未承認国家であるアルツァフ共和国の歴史や、そこでの食文化、人々とのエピソードが語られました。「ブチャと聞けば、虐殺が起きた街など、ネガティブな印象が一般的に持たれやすいが、自分にとってのブチャは、真っ青な空や、公園で歓声をあげて遊ぶ子供たちの姿の、むしろ明るいイメージだ。ひとつの土地に、本来は多様な姿があるのに、そこでのある側面に限ってメディアが報道し続けることで、イメージが固定化していくことの疑問も感じた、というお話も。また夫や父親など、家族の一人を戦争で失くした女性たちのインタビューでは、過去に何があったかを聞くことで、その女性たちを傷つけてしまう、泣かせてしまうことも多々あったそうです。自分は何をしているんだろう、取材によって彼女たちを傷つけることになってはいないか、と葛藤したとのこと。そうしたなか、ウクライナの取材で会った川嶋さんに言われたのは、「彼女たちは、小野寺さんが自分たちの話を誰かに伝えてくれると信じて、あなたに伝えてくれたんじゃないのか」という言葉だったそうです。まさに、現場に立たなければ感じ得ぬ葛藤を語っていただきました。

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小野寺さんのトークの様子。

最後は川嶋さんのお話です。会場の照明を落とし、浮き上がるスクリーンに、柔らかで、しかし人物に迫った素晴らしいポートレートが投影されました。写真一枚一枚にまつわるエピソードを、慈しむように丁寧に語る姿は、まさに写真家ならではの語り口でした。

お話の冒頭、川嶋さんが口にしたのは、〝戦争の真実はその最前線にではなく、戦時下を生きる現場の人々の眼差しの中にある〟というお話でした。だからこそ川嶋さんは、そこに生きる人々のポートレートを撮り続けているのだそうです。この言葉が示すのは、単に戦時下での生活という意味だけでなく、支配されることが長かった土地で、人々が脈々と生きてきたこと。そしてそこで育まれ、伝えられてきた文化をも内包する、そうした意味での人々の眼差しなのだそうです。

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トーク中のひとコマ。参加費を数える次男とお手伝いいただいたIさん。
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川嶋さんのトークの様子。素晴らしいポートレートをじっくりと見せていただきながら、一枚一枚の写真や、人物のエピソードをじっくりと聞いた。
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川嶋さんのトークの最後の一枚。戦争で亡くなったあるウクライナ人の手の写真だという。「この人は、最後にこの手で何を触りたかったのだろうか。何を握りたかったのだろうか」と考えたとのこと。森祐一さん(ジャーナリスト)撮影。

情熱と臨場感にあふれた小野寺さんと川嶋さんのお話に、私も大変感銘を受け、良い刺激をいただきました。小野寺さん、川嶋さん、これからもフォトジャーナリストとしての厳しい道を、互いに高め合って突き進んでいきましょう!素晴らしい時間をありがとうございました。

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会場内では、それぞれの取材地にちなんだグッズを展示しました。こちらは川嶋さんによる展示。手前にあるのはウクライナの旗。森祐一さん(ジャーナリスト)撮影。
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小松によるシリアの展示。アサド政権崩壊前の2022年の取材で、空爆によって半壊した、シリア中部のパルミラの夫の実家から持参した残置物を展示した。森祐一さん(ジャーナリスト)撮影。

このイベントを通じて考えたことは、私ももっともっと、対象に迫る、突き詰めた取材をしたいし、突き詰めた表現をしたいということでした。信念を持って、独自性を追求し、とにかく続けていくことです。

金曜日の遅い時間にも関わらず、イベントにご来場いただきましたたくさんの皆様、いつも応援いただいている皆様、本当にどうもありがとうございました。

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イベント途中、子供たちが暴走してえらいことになった・・・。子供を預けられたら一番いいのだけれど、取材先に連れねばならなかったり、イベントを開催しながらなんとかしなければいけないとき、一体どうしたらいいのか、今後も悩み続けることになるだろう。
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それぞれのトークの後の、鼎談の時間。皆様から、たくさんのご質問をいただきました。森祐一さん(ジャーナリスト)撮影。 
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「取材で苦労していること」、「取材資金をどのように確保しているか」、「日本での日常での苦労は?」などの質問に答えていきました。森祐一さん(ジャーナリスト)撮影。
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皆さま、どうもありがとうございました!写真は、お客様撮影。

(2025年5月16日 小松由佳)