『月刊みんぱく』2023年8月号に寄稿させていただきました

大変光栄なことに、国立民族学博物館発行の月刊誌『みんぱく』(2023年8月号)様に寄稿させていただきました。

〜「人々は嘘をついているのではなく、「あえて真実を語らない」。いや「語れない」のだ。それが、このシリアを生きなければならない彼らからの、見えないメッセージなのだ。〜(文中より)

(『月刊みんぱく』「特集 政治的なるものと不条理の超克」国立民族学博物館 発行(2023年8月号))

(「これが、あのパルミラ・・・」小松由佳)

当初、原稿執筆テーマとして伝えられていたのは、「独裁下を生きる知恵」。世界各国の独裁政権下で、人々がどのように生きてきたか、生きているのかについて特集するということでした。私はこの10年ほど、シリア難民の取材を行ない、また昨年2022年には、11年ぶりのシリア国内取材に入りました。そうした背景から、内戦状態のシリアについて、フォトグラファーとしての視点から書けることを、というお話でした。

依頼をいただき第一に感じたのは、このような深みのある内容を書かせていただけることへの僥倖、そして「なんという難しいテーマだろう・・・」ということでした。雑誌の発行元が「国立」博物館であるため、そのバックにあるものを考えると、内容に大変気を遣いました。というのも、事実は事実として示しながらも、政治的な中立性を持たせなければならないからです。

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「トルコ・シリア大地震 被災地取材 オンライン報告会(8月22日開催)」の録画視聴について

8月22日、6月に行ったトルコ・シリア大地震の被災地取材のオンライン報告会を行わせていただきました。

以下は、報告会をレコーディングしたデータとなります。ご自由にご視聴ください。
なお、すみませんがこちらのデータのインターネットへの投稿や第三者へのシェアはご遠慮いただきますよう、お願いいたします。

(こちらは、「小松由佳HP有料コンテンツ」の会員様は無料でご覧いただけます。その他の皆様は、視聴料1000円、または「困窮者枠利用で無料」でご利用いただけます。HPの「コンタクト」よりお問合せください)

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トルコ・シリア大地震の被災地取材 オンライン報告会について 

*日時:2023年8月22日 19:00〜21:00

*参加費1000円。ただし、HP有料会員、地震被災者支援金を下さった方、困窮している方などは無料。(HP有料会員の皆様には、直接zoomのURLをご連絡しております)

*こちらはzoomを使用したオンラインイベントです。報告会に入室する「招待URL」は、申し込み後にメールにてお送りいたします。

<はじめに> 

今年2月6日に発生したトルコ・シリア大地震。マグニチュード7.8の巨大地震とその後の余震により、多くの建物が倒壊し、両国で5万人強の犠牲者が出ました。それから4カ月が経った今年6月、被災地の状況を取材するためトルコ南部に向かいました。

主な取材地は、甚大な被害があったトルコ南東部のハタイ県アンタキヤや、避難者が多く暮らすレイハンルです。これらの街で、特に地震で被災したシリア人の状況を取材しました。

地震大国の日本に暮らす私たちにとっても、地震被害は決して遠い国の出来事ではありません。被災地で目にしたこと、感じたことを是非皆様と共に共有させていただけたらと思い、オンライン取材報告会を企画しました。ぜひご参加ください。

<お申し込み先> https://peatix.com/event/3673916/view

(地震によって倒壊した家を案内いただく。トルコ南東部クルクハンにて)

<取材報告会の要旨>
・大地震の発生
・被害状況
・倒壊したかつての家と被災者
・シリア人とトルコ人の支援格差
・シリア人被災者キャンプ、ケーンンマウラーキャンプ
・被災者をとりまく現状
・地震の教訓を考える

以上、よろしくお願いします。

終戦の日、ご紹介したい一冊

8月15日は終戦の日。あの戦争から78年が経ちました。戦争は終わりましたが、戦争が残した傷は、今もその時代を生きた人々や戦後を生きた人々の中に消えずに残っています。戦争の悲惨さは、長期間にわたって人間を苦しめ、境遇を左右し続けることでもあります。終戦の日を迎え、是非皆様にお薦めしたい一冊があります。

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『ヨシアキは戦争で生まれ、戦争で死んだ』改訂版 

 面高直子著/ 講談社

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<小松による書評>

その本の表紙写真を飾るのは、爽やかな笑顔の軍服の青年だ。ページをめくると次に現れるのは、自転車に乗ってこちらを見つめる幼い男の子の写真。

後田義明(うしろだ よしあき)とスティーブ・フラハティ。それは日本人として生まれ、アメリカ人として死んだ一人の青年の名だ。

神奈川県大磯町にある孤児院エリザベス・サンダース・ホーム。戦後生まれた多くの混血児が引き取られた孤児院である。米兵の父親を持つ後田義明も、母の手に引かれ、4歳でここにやってきた。敗戦国日本で、米軍兵士との間に生まれた混血児たちは、当時「あいのこ」と呼ばれ、差別を受けた。混血児を生んだ義明の母も、周囲からの協力が得られず、差別を受けながら女手一人で子供を育てることに苦しんだ。手に職をもって生活が安定するまで・・・。そう考え、幼い息子を連れたのがエリザベス・サンダース・ホームであり、自転車に乗る義明の写真は、施設に預けるその日、おめかしをして撮られたものだった。

「必ず迎えに来るからね」。母とのその約束は果たされず、11歳になった義明は養子縁組のため、カバン一つを携えてアメリカに渡る。混血児たちのより良い将来のため、人種が多様なアメリカに渡ることが良いと考えたエリザベス・サンダース・ホームの方針からだった。義明はそこでスティーブという名を与えられ、新しい生活が始まった。

天性のスポーツの才能からスター選手として活躍し、学園の人気者だった義明だが、混血という出自に悩み、自分の居場所を探し続けた。やがてアメリカ国民としての義務を果たすため、〝正義〟と信じるベトナム戦争へ志願。そして1969年、22歳の若さで戦死する。

 9年後、日本のテレビ番組で義明の死を知ったのは実母、後田次恵だった。物語は後田次恵の半生へと引き継がれる。母も子も、それぞれに過酷な戦後を生きた。戦争がもたらす幾重もの悲劇。しかしそこにあって、生きることを諦めない人間の姿がある。涙なくしては読めない、母と子の物語である。

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この本を読んだのは3年前のことです。その日、本を一気に読み終えた私は、深い悲しみに、一睡もすることができませんでした。日本人として生まれ、アメリカ人として死んでいった義明の生涯を思い、二度とこうした悲劇が起きないよう、こうした人々の存在を知り、平和につながるための活動をしたいと思いました。これまで読んだ本の中で、ここまで心が震えた本は他にはありませんでした。

この本に描かれているのは、米兵との混血児として生まれた後田義明、そしてその母親である次恵、そして「エリザベス・サンダース・ホーム」の創始者である澤田美喜です。それぞれが、戦争で大きな傷を負いながら、戦後を必死に生きようとしていました。

エリザベス・サンダース・ホームと澤田美喜

義明が連れられた「エリザベス・サンダース・ホーム」とは、敗戦後のGHQの占領下、進駐軍兵士と日本人女性との間に生まれた孤児のための救済施設でした。現在も神奈川県大磯町に現存し、児童養護施設として親と暮らすのが難しい子どもたちの自立活動に関わっています。

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信濃毎日新聞様に寄稿させていただきました

長野県の新聞社、信濃毎日新聞様に、6月の地震被災地取材の内容を2回に分けて寄稿させていただきました。取材内容を多くの方々に知っていただける素晴らしい機会をいただき、大変光栄なことでした。

「トルコ・シリア大地震 被災地はいま」〜重なる苦難〜 「上」・「下」

(信濃毎日新聞 2023年7月28日)

(信濃毎日新聞 2023年8月2日)

今後もこのようなお仕事をたくさんやらせていただけるよう、努力したいと思います。

*新聞への寄稿について裏話

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フォトジャーナリスト豊田直巳さんのお話から〜イラク戦争から20年〜

7月27日、東京都北区の絵本屋「青猫書房」にて行われた、フォトジャーナリスト豊田直巳さんのトークイベントに行ってきました。

豊田さんは、イラク戦争などの紛争地を精力的に取材されてきたフォトジャーナリスト・ドキュメンタリー映画監督で、最近では原発事故後の福島を継続して取材しています。イラク戦争勃発から20年目を迎えた今年、イラク戦争取材のお話をされるとのことで、参加してきました。

(豊田さんのプロフィール)

〈 以下、豊田さんのお話 要旨 〉 

イラク戦争が始まったのは2000年3月20日。この日、アメリカ主導「有志連合軍」が、大量破壊兵器があるとかで、戦争を一方的に始めた。以降、豊田さんは戦争取材のためイラクに頻繁に通った。

*小松メモ  〜イラク戦争の始まり〜                            

イラクのサダム・フセイン政権が、国連の求めた大量破壊兵器(WMD)に関する査察に非協力的だったことを理由に、米英軍は2003年3月20日、バグダッドの空爆を行い、イラク戦争が始まった。しかしその後、大量破壊兵器は発見されず、ブッシュ政権が依拠した大量破壊兵器に関する情報の誤りも明らかになった。

戦争開始直後、豊田さんはすぐ現地に入り、イラク戦争の最初の犠牲者を撮影することになった。クェートからイラクに入った国境のドライブインの隣にある郵便局が最初の空爆を受け、そこで亡くなったのが、当時豊田さんが雇っていた車の運転手の兄だった。空爆で亡くなった、その運転手の兄を撮影した。

その頃、戦争開始から48時間以内にフセイン大統領がイラクから去れば、これ以上の攻撃は止めるとアメリカは言っていたが、それも嘘で、空爆はどんどん続いていた。どこが標的になるのか、爆弾が落ちるか分からず、イラクの人々は逃げようがなかった。

イラク戦争ではクラスター爆弾が使われた。クラスター爆弾は今、ウクライナでも使用されているが、殺傷能力が強く、広範囲を破壊することで知られる危険な爆弾。非人道的であることから「クラスター爆弾禁止条約」が締結されている。

*小松メモ〜クラスター爆弾とは?〜                                 

ひとつの親爆弾の中から、大量の子爆弾がばらまかれる方式の爆弾のこと。その仕組みは、1発の容器(親爆弾)に数個から数百個の小さな爆弾(子爆弾)が入った爆弾で、親爆弾が空中で開くと、たくさんの爆弾が広い範囲にばらまかれるというもの。集束爆弾、親子爆弾とも言われる。

(「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」HPより引用)

*小松メモ 〜クラスター爆弾禁止条約〜

2004年に締結された。日本も含めて111か国が合意している。

(AFP通信/2008年6日2日記事より引用)

イラクに空爆が続くなか、世界各国から戦争に反対する活動家が集まり、「人間の盾」としての活動を行うようになる。なかには日本人も数十人いた。彼らの主張は、武力によって戦争は解決しないということ。特に市民の生活インフラに関わる浄水場や発電所で「人間の盾」になり、そこが攻撃されないように活動した。しかし実際には、そんなことはお構いなしに攻撃された。

*小松メモ 〜「人間の盾」とは〜

Human shield。目標物に民間人がいることを敵に知らせ、攻撃を思いとどまらせる活動。しかし国際法では、人間の盾を使って軍事目標を守ることは戦争犯罪であるとみなされている。

その後4月8日、米軍がバクダッドの高級ホテル、パレスチナホテルを空爆した。ここに宿泊していたのは海外メディア関係者がほとんどで、こうした人々が犠牲になった。豊田さんもここに泊まっていた。

    (空爆直後のパレスチナホテルで、途方に暮れるメディア関係者)

その翌日、4月9日に首都バクダッドが陥落した。街の中心部に、米軍の戦車が入っていく。フセイン大統領の像も引き倒され、ロイター通信が撮影したその写真が世界へと拡散された。

この写真を見た豊田さんは、「違うんじゃないか?」と思ったという。像が引き倒されたのは事実だが、引き倒しているのが誰なのかはこの写真だとわからない。主語が見えない写真で良いのか、と当時思ったし、今も思っている。さらにこの光景を見ていた市民の視線は、報道で伝わったか?という疑問があった。それこそが伝えるべきものではなかったか。

同日4月9日の午後から、米軍は市民に銃を向けるようになった。米兵による検問も大変厳しくなった。その光景からは、「これが本当に、(アメリカ側が主張する)サダムフセインの圧政から解放されたイラクの姿なのか?」と感じたという。

また、空爆され破壊された家から、物を盗む人が増えた。そうした「アリババ(アラビア語で〝泥棒〟)」を米軍は放置した。本来は、そこを占領したアメリカ軍が治安を取り締まらなければいけないのに、一切放置した。そのため現地の警察機能が麻痺していった。

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八王子市「多文化共生写真展」に出展します

8月6日(日)の 10時〜16時、八王子市にて行われる「多文化共生写真展」に出展します。

こちらは、京王線八王子駅から徒歩3分の(JR八王子駅からは徒歩5分)、「東京たま未来メッセ」で開催されるイベントで、様々な国の文化を写真展や文化交流から体感するという企画です。お土産品やお茶の試飲などのコーナーもあるようです。

私は「トルコ・シリア」の企画展示で参加し、6月のトルコ・シリア地震の被災地の写真、昨年のシリア取材で目にした破壊されたパルミラの写真、シリア難民の写真の三つを展示します。また、国際理解を深めるためのイベントとのことで、大人向け・子供向けクイズも行います(景品もあり)。

おりしも8月6日は、八王子駅近くの甲州街道で行われる伝統行事「八王子まつり」の最終日です。ぜひ祭り見物と併せて、こちらの展示にもお越しください。当日、私は会場に在廊しております。

(以下、詳細です)

https://hachikomi.genki365.net/G0000533/system/event/5483.html