共同通信様に寄稿させていただきました

2月6日に発生したトルコ・シリア大地震から1カ月のタイミングで、共同通信様に記事を書かせていただきました。秋田魁新報様、信濃毎日新聞様など、全国の地方紙に配信され、五月雨式に掲載されたようです。

(2023年3月2日 信濃毎日新聞)

<以下、記事全文です>

再び生活奪われたシリア難民

トルコ・シリア大地震から6日で1カ月。死者が5万人を超え、現地では混乱状態が続いている。

トルコには、内戦から逃れてきた360万人以上のシリア難民が暮らし、その数はシリア難民全体の7割弱に及ぶ。大量の難民を、トルコでは比較的寛容な立場で受け入れてきた。

しかしその同情論は近年、コロナ禍で一変した。トルコ政府の経済政策の失敗で物価が上昇。社会の不満がシリア難民に向かった。「シリア人はシリアに帰るべきだ」と排他的風潮が高まっていた。

こうした中で、地震は発生した。シリア人は再び地震が起きる不安におびえている。建物の倒壊を恐れて家に戻れず、路上や空き地、公園、畑などにテントを張り避難している。各国から支援物資が届けられたが、暖を取るための薪や石炭、毛布、テントなどが今も不足しているという。

シリア国境の移動規制が緩和したこともあり、シリアに移動するシリア人も多い。トルコの首都アンカラの非政府組織(NGO)で働いていたムサンナ・アルバクルも、その一人。給与が安い上、アンカラの物価が高騰し、生活は限界に達していた。地震後、家賃が2倍に上がったことが追いうちをかけた。

アンカラやメルシンなどのトルコ南部の大都市では、被災地から親族を頼って移動してくるトルコ人も多く、住居需要が高まっている。既に入居していたシリア人を家主が追い出し、新たに親族を招き入れることも増えた。そのため、地震で直接被災しなかったムサンナのようなシリア人が、法外な家賃を請求され、生活基盤を失うケースが多く報告されている。

また被災後、シリア人はトルコ人と比べ、明確な格差をつけられるようになった。特に支援物資の配給や捜索の場で顕著だ。物資を受け取れずに、避難所を利用できないこともあった。さらに不満のはけ口となり、暴力事件に巻き込まれることも増えた。こうした動きから、ムサンナはシリアへの移動を決めた。

「内戦が続くシリアでは空爆の危険もあります。しかしトルコに比べたら、シリアは私たちにとって楽園です」。ムサンナ一家は現在、国境に近いイドリブ県サルマダの親族の家に身を寄せている。シリアはトルコに比べ物価が安く、住民から差別を受けることもない。何より、誰からも虐げられないという安心感がある。

だが問題もある。シリアでは、国内が政治的に分断され、人道支援すらままならない。地震の被害を受けたシリア北西部イドリブ県でも、反体制派支配地域であるため支援が入りにくい。今回も地震発生から3日後になってようやく支援が入った。トルコ側に比べると圧倒的に支援体制が弱い。

「この地震は、シリアの空爆の恐怖を呼び起こさせました。そして一度シリアで失った生活を、もう一度奪いました」。

状況が落ち着いたら、ムサンナは再びトルコに戻るつもりでいる。生活は困難だが、子供たちのため、選択肢の多い環境に身を置きたいと考えているからだ。

被災地では、住居不足と地震への恐れから、避難生活がしばらく続くだろう。こうした状況下、圧倒的に困窮層が多かったシリア人が、さらに生活苦へと追い込まれていくことが懸念される。シリア人にとって、この地震による被災は、これまで続いてきた終わりの見えない避難生活の延長線上でしかない。

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(カンやビンなどの資源物を集めるシリア難民、カーセム・アウラージ。ハタイ県レイハンル。2017年。このあたりはレイハンルの旧市街で古い建物が多く、地震で被害を受けた)

記事について、ひとこと

記事を寄稿させていただき、大変光栄なことでした。一方で、地震から1カ月が経ち、報道も少なくなり、現地の様子が臨場感をもって伝えられなくなりつつあると感じています。

多くの国際支援が現地に届いていますが、支援の格差やシリア人への排他的風潮が見られ、地震で直接被災しなかったにもかかわらず、家を追い出され、シリアに帰ることを選択するシリア人も少なくないようです。被災地では、今も多くの人々がテントを手に入れられず、倒壊の危険のある建物にやむなく住み続けたり、路上で暮らしています。残念ながらそのほとんどがシリア人で、トルコの公的な支援から排除されているようです。ハタイ県レイハンルに暮らす知人の話では、NPOがテントを配布していたが、列に並ぼうとしたところ、トルコ人の警察や警備員に拒否され、追い払われたとのこと。アンタキヤ、レイハンル、ガジィアンテップなどの複数のシリア人の知人から同じ話を聞いております。大変残念なことです。

記事執筆にあたり話を聞いたシリア人、ムサンナ・アルバクルの話が忘れられません。「シリアでは空爆の危険もあります。しかしトルコに比べたら、シリアは私たちにとって楽園です」。空爆の危険があっても、インフラが非常に不安定でも(電気、ガスなどは1日のうち半分使えれば良いほう)、シリア人故の差別や理不尽な立退などを迫られることのないシリアは、何より安心できる土地だというのです。これまで異郷に生きようと努力してきたシリア人の、深い失望と悲しみを感じるのでした。

「この地震は、一度シリアで失った生活を、もう一度奪いました」というムサンナの言葉からは、延々と続く不安定な避難生活への、疲労感が感じられます。記事の最後に書きましたが、シリア人にとって、この地震による被災は、これまで続いてきた終わりの見えない避難生活の延長線上でしかないのです。

AERAdot.(アエラドット)様にインタビューいただきました(2月19日配信記事)

2月6日に発生したトルコ・シリア地震の現地の状況について、インタビューいただきました。大きな被害を受けたトルコ南部ハタイ県、オスマニエ県などを長年取材し、現地に夫の親族や知人がシリア難民として暮らしていることからお話をいただきました。

https://dot.asahi.com/dot/2023021700055.html?page=1

現地で浮き上がっているのは、トルコ人とシリア人への支援の格差のようです。もともと社会的弱者だったシリア人たちが、さらに厳しい生活に追い込まれていくことが懸念されます。

(2023年2月20日)

NHKラジオに出演いたしました(2月14日18時出演)

2月6日に発生したトルコ・シリア地震について、現地の知人から聞いた状況などを交えてお話させていただきました。生放送でモゴモゴしてしまいました。(ご注意:聞き逃し配信は2月21日20:00まで)

トルコ・シリア大地震 シリア難民の状況は【Nらじ】ニュースアップ

<番組のご視聴はこちらより>

https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=4774_04_3843370&fbclid=IwAR2k4Xts-6BXjK_GYGa11CGHSxXvPK4tqRyLxwciI2dXEkIY_Pn5ktoL7I8

『岳人』様に寄稿させていただきました

『岳人』2023年1月号( No.907)に寄稿させていただきました。

このところ、故郷秋田を訪ね、土地に刻まれた先人の歴史を取材しています。人々が歩いた道、生きた痕跡を訪ねて。私の目から見た故郷の姿を撮りためていきます。

こちらでは、秋田県南部に残る、飢饉の悲しい歴史について執筆しました。

(2023年1月12日)

シリア取材後、放心状態になっています。本日9月28日18時半より、ラジオ出演いたします。

本日9月28日放送のNHKラジオ「Nラジ」に、取材先のトルコより生出演いたします。

https://www4.nhk.or.jp/nradi/

私が出演するのは15分ほどですが、現在滞在しているシリア国境の街レイハンルより、シリア難民の置かれた状況についてお話いたします。

シリア取材を終えトルコに戻ってから、やるべき取材をなんとか継続していますが、放心状態が続いています。

テレビやインターネットでは目にしていたものの、自分の目で見たシリアの状況が、ショックそのものだったからです。

シリア政府機関による厳重な情報統制や、激しい空爆によって廃墟と化したパルミラの街。特に、シリア政府に軍事協力を行うロシア軍による空爆の被害は凄まじいものでした。

一般市民を標的にした重大な戦争犯罪が、シリア政府とその協力者であるロシア軍によって行われ、今も続いています。

私は今、トルコ側のシリア国境の街、レイハンルにおります。
トルコ時間の昨日、9月27日11:30頃、レイハンルの街に地鳴りのような衝撃音が響きました。国境をまたいだシリア側、レイハンルにほど近い「カファル・ロースィーン難民キャンプ」にて、ロシア軍による爆撃があったのです。

爆弾が落ちたのは難民キャンプ内の子供たちの学校で、多数の死傷者が確認されています。難民キャンプには軍事組織もありません。ロシア空軍は、ここにいるのが一般人であることを知りながら空爆を行ったのです。

こうした一般人の居住区を故意に狙うロシア空軍による爆撃が、シリア北西部イドリブ県では今も頻発しています。

写真は、ホムスからパルミラに向かう道中に撮影した看板です。シリアとロシア、二人の国家元首が、軍事上、深い協力関係であることを物語っています。

現在、ロシア軍のウクライナでの蛮行がメディアでも連日取り上げられていますが、それは2015年以降、シリアで民間人に対してずっと行われてきたことです。そして今もなお、こうした無差別爆撃の脅威に晒されている多くのシリアの民間人がいることを、もっと多くの人に知っていただき、関心を持っていただきたいと心から思います。

そんなわけで長い話となりましたが、本日、ラジオ出演をさせていただきます。ぜひご視聴ください。また、放送後一週間は聞き逃し配信もされるようなので、改めてご案内させていただきます。

放心状態のまま、あと一週間ほどで帰国です。

2022年8月のテレビ出演のお知らせ  

NHK「こころの時代〜宗教・人生〜」2022年8月28日午前5時放送

https://www.nhk.jp/p/ts/X83KJR6973/episode/te/E2JRQNVRR2/

NHKの番組のなかでも最も硬派な番組だとされる「こころの時代〜宗教・人生〜」に取材いただき、私の活動について取り上げていただきました。

「その人自身の言葉を、ここまで丁寧に扱う番組はほかにありません」と、担当ディレクターから聞いております。インタビューは、トルコ取材の出発直前に、都内にてじっくりと行なわれました。

私の活動や思いを番組としてご紹介いただき、大変光栄です。とても嬉しかったのは、担当ディレクターのKさんが、私の故郷の撮影のため初めて秋田を訪れ、秋田市郊外の懐かしい故郷の山々、田んぼの風景を写真で送ってくださったこと。

その時はトルコにおり、まさに体調不良の真っ最中でしたが、故郷の山に見守られているような、清々しい気持ちになりました。

番組の放送時間はなんと28日午前5時ですが、録画してぜひご覧ください。

9/1からは一週間、NHKのサイトから見逃し配信として、インターネット上でも視聴できるようです。

NHK番組「「朝ごはんLab.(ラボ)」に出演します

井川遥さんがナビゲートするNHK番組「朝ごはんラボ」に出演します。

月曜[総合]後11:00~11:30
7月18日(月・祝)「お豆腐スープのそうめん」の回にて

https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=34835

こちらの7月18日放送分にて、「シリアの朝ごはん」として我が家の朝食の光景が紹介されます。

番組HPより。

家族が集う楽しい休日の朝、我が家でたまに作るのがシリア料理の「キシック」。ヤギや牛の乳を混ぜて作ったチーズを乾燥させ、粉状にしたものを、お湯で煮溶かし、ひき肉やハーブ、ナッツなどをかけて作るアラブ民族の伝統料理のひとつです。

夫のルーツ、シリア中部のパルミラでは休日の朝食として定番の一品ですが、同じシリアでもダマスカスやアレッポなどの都市部では食べたことがないシリア人も多いとか。キシックは、地域性豊かなシリアの食文化を物語る一品なのです。

番組HPより。下の写真が「キシック」。

今回の番組出演にあたり、まさか、私がきわめて危険な調理をするわけにいかないので、近所に住んでいる夫の甥のムハンマドが料理番長として、本場の味を再現してくれました。部屋の掃除が行き届かずお恥ずかしいのですが、是非ご覧ください!

秋田魁新報様に寄稿させていただきました

秋田魁新報様にて連載の機会をいただき、「遠い風 近い風」というコーナーにエッセイを書かせていただきました。

1回目の今回は、15年ほど前の自転車旅の思い出について。人との出会いもそうですが、土地との出会いもまた一期一会。福島の報道を目にする度、あのとき出会った梨園のおばちゃんのことを思い出しております。

(2022年5月19日)

信濃毎日新聞様に寄稿させていただきました(2022年4月8日)

大変光栄なことに、ウクライナ侵攻について寄稿させていただきました。以下、本文より抜粋です。

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「過熱する連日のウクライナ侵攻の報道を目にし、シリア難民を取材する一人として感じることがある。中東の一角で起きることと欧州の一角で起きることでは、世界を取り巻く危機意識も、人間の命の重みも、扱われ方が同じではないということだ。ロシアに対抗する西欧諸国の連帯の早さも、規模も、内容も、全てがシリアでのケースとは大違いだ。」

「それにしても泥沼の戦争を経験し、その苦しみを誰よりも知っているはずのシリア人が、報酬を求めて他国の戦争に加担する構図は、悲惨としか言いようがない。」

「他国に侵略した軍の一員としての責任は負うべきだ。だが同時に、こうした兵士たちが私たちとさほど変わらない人間であることを忘れてはいけないと感じる。彼らも誰かを愛し、誰かから愛される存在であり、家族や恋人など、帰りを待っている多くの人々がいるだろう。

 そうした一人一人が、戦地に立ち、殺戮に加担しなければいけない戦争の狂気、構造の問題をこそ考えたい。その視点を失ってしまうとき、私たちもまた、戦争が引き起こす人間の分断に巻き込まれていくのではないだろうか。」

写真雑誌『CAPA』様に寄稿させていただきました(2022年3月号)

「写真家×SDGs 未来に手渡す写真」コーナーにて。

「イデオロギーは、ときに真実を覆うことがある。それに対し、生きた生身の人間がそこにいるという“存在そのもの”は、決して覆うことができない。語られることのない多くの人間の物語、その一つ一つに唯一無二の輝きがあること。そのありのままを、写真に切り撮っていく。それが、写真家としてこの世界に生きる挑戦だと信じている」(本文より)

映画「国境の夜想曲」サイトにて、感想を掲載いただきました。

・・・どんな場所でも、どんな夜でも、必ず朝は来る・・・

イラク、レバノン、シリア、クルディスタンを舞台にしたドキュメンタリー映画、「国境の夜想曲」。その名の通り本作は、国境地帯での人々の営みを、圧倒的リアリティと、光と影を印象的に捉えた美しい映像によって描いた作品です。

「国境の夜想曲」 

https://bitters.co.jp/yasokyoku/

2022年2月11日より、全国ロードショー。気鋭のドキュメンタリー映画監督して知られるジャンフランコ・ロージ氏の最新作で、ヴェネチア国際映画祭にて三冠を受賞しています。

大変恐縮ながら、私も同地域を取材しているというご縁から、「国境の夜想曲」の感想を作品のサイトに寄せさせていただきました。どうぞご覧ください。

https://bitters.co.jp/yasokyoku/interview1.php

「国境の夜想曲」は、中東地域を舞台にしたこれまでの映画とは全く違った、新しいドキュメンタリーです。本作の素晴らしい点は、彼らが誰であり、どこに生きているのか、背景にある情勢や政治についての具体的な部分を語ることなく、ただ目の前に存在している人間の姿を圧倒的リアリティで写し出している点です。そうした点で、例え人々が政治やイデオロギー、民族によって分断されていても、カメラが捉えた人々はカテゴライズで分断されることなく、あるがままの人間として私たちに迫ってくるのです。ぜひ映画館での大画面での鑑賞をお勧めいたします。

                                        (2022年2月2日)

第8回 山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞いたしました(2021年5月)

第8回 山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞いたしました。
https://www.mymf.or.jp/prize.html

(選考評)
https://www.mymf.or.jp/topics/news_2021-05-14.html

シリア内戦を内側から描いたノンフィクション「人間の土地へ」(集英社インターナショナル/2020)を評価いただき、受賞となりました。

共同通信様より取材いただきました(2021年3月)

「遊牧民的価値観と共生」(2021年3月)

(中部経済新聞に掲載)
https://www.chukei-news.co.jp/news/2021/03/13/OK0002103130801_01/

(アラビア語版)
https://www.syria.tv/قصة-سوري-من-تدمر-تزوج-من-يابانية-بعد-انشقاقه-عن-قوات-النظام?fbclid=IwAR3ZdW4bxMurbvP5zaK_Xkfv8R6-t0LLdq7P1mt6g2NyLBie4FZiSXSk_Fo

以下、記事より抜粋。

「昨年末には、夫の親戚らシリア人2人が来日した。小松ら家族と寝食を共にしている。ある日の夕食は『マンサフ』と呼ばれる鶏肉を使ったシリア風の炊き込みご飯だった。同居人が増えても、小松は意に介さない。『10年ぶりに会ったので、懐かしい。シリアにいたときのような感覚』。シリアの人々への愛情は懐の深さの証でもある」