ESSAY

サイドナヤ刑務所に生きていた兄、サーメル

シリア人ならば、「サイドナヤ刑務所」の名を知らない者はいません。 首都ダマスカス郊外にあり、常時1000人以上が収監されていたとされるこの刑務所は、アサド政権による抑圧の象徴として、恐れられてきました。 2011年以降、シリアではアサド政権反対派を中心とする約13万人以上が政府軍によって拘束され、国

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シリア大使館の二つの国旗と、アサド政権崩壊の影響

ロンドンに到着するなり、シリアのアサド政権の崩壊を知った今回の取材。すごいタイミングでヨーロッパ取材が始まり、ザワザワした心境で取材1日目をスタートさせました。 イギリスに着くなり、息子(8歳)が日本に帰りたいと言い出し、日本にいる夫(2012年にシリアから逃れた難民の一人)もシリアに帰りたいと言い

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小松由佳

ジャマール兄と過ごした11月

我が家では今、夫の兄のジャマールが居候中だ。普段、ただでさえ、シリア人の夫との日常がサスペンス劇場状態であり、二人の子供の育児はパニック状態だったが、ジャマール兄の居候によってパニック度合いはさらに高まり、しばらくただ日々を懸命に送ることにいっぱいいっぱいであった。以下は、その兄との生活を振り返って

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小松由佳

K2に逝った先輩を偲んで

その一報を受けたのは7月28日のことだった。 K2西壁の未踏ルートに挑んでいた平出和也さん(45)と中島健郎くん(39)が、7000m地点から墜落した、という知らせだった(*)。聞けば、27日午前11 時半頃に墜落、約1000m落ちて、体は約6000m地点にあるのが確認できているという。その時点で2

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沖縄の記憶

「白旗の少女」 子供時代に読んだ本で忘れられない一冊がある。その本の表紙には、ボロボロの服を纏ったおかっぱ頭の女の子が、一方の手に白旗を持ち、一方の手を振る写真が載っている。当時7歳だった比嘉富子(ひがとみこ)による沖縄戦の回想録「白旗の少女」だ。 太平洋戦争末期の1945年6月、米軍が上陸した沖縄

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小松由佳

〝みんなのおじちゃん〟になる 〜在日コリアンの元プロサッカー選手、安英学さんの挑戦〜

在日コリアンのサッカー選手、安英学(アン・ヨンハ)さん JR横浜駅から、閑静な住宅地にある見晴らしの良い高台を目指す。在日コリアンの元プロサッカー選手、安英学(アン・ヨンハ)さんとのご縁で、あるサッカースクールを訪ねるためだ。 安さんは在日コリアン3世。アルビレックス新潟や名古屋グランパスエイト、大

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新年、あけましておめでとうございます

皆様、あけましておめでとうございます。2024年がやってきました。私はこの新年を、イギリス南東部、ドーバー海峡を臨む港町ドーバーにて迎えました。新年を取材地で迎えられる幸せ。取材に連れている二人の子供たちも毎日元気いっぱいです。 昨年2023年は、振り返るととても愛しい一年でした。 年始めから長く胃

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イスラエルとガザの衝突から一カ月(2023年11月15日)

11月15日。ガザを実効支配するハマスが大規模攻撃を仕掛けてから一ヶ月と7日が経過した。ガザをめぐる状況は、悲惨の一言に尽きる。インフラがほぼ遮断された状況で、ガザの人々は一方的な避難を余儀なくされ、空爆は続き、ガザ側の死者は増え続けている。イスラエル軍はハマス壊滅を謳って地上進侵攻に踏みきり、ガザ

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小松由佳

福島の被災地へ① 〜あの日は終わらない〜

この8月、震災以後初めて、福島の被災地を歩きました。2011年の東日本大震災と、その後も福島で続いている放射能被害についてずっと気になってはいましたが、触れることができずに時間が流れていました。今回、お盆に秋田の実家に帰るため、鈍行列車で三日かけて北上し、その途中で福島の被災地を訪ねました。 これま

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『月刊みんぱく』2023年8月号に寄稿させていただきました

大変光栄なことに、国立民族学博物館発行の月刊誌『みんぱく』(2023年8月号)様に寄稿させていただきました。 〜「人々は嘘をついているのではなく、「あえて真実を語らない」。いや「語れない」のだ。それが、このシリアを生きなければならない彼らからの、見えないメッセージなのだ。〜(文中より) (『月刊みん

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終戦の日、ご紹介したい一冊

8月15日は終戦の日。あの戦争から78年が経ちました。戦争は終わりましたが、戦争が残した傷は、今もその時代を生きた人々や戦後を生きた人々の中に消えずに残っています。戦争の悲惨さは、長期間にわたって人間を苦しめ、境遇を左右し続けることでもあります。終戦の日を迎え、是非皆様にお薦めしたい一冊があります。