トルコ・シリア地震 取材報告会のお知らせ

6月に行った、トルコ側の地震被災地の取材報告会のお知らせです。この取材では、被災者の方々のお話から、災害時の教訓について大変考えさせられました。

こちらの取材報告会は、探検家・医師の関野吉晴さんの連続講座「地球永住計画」にてやらせていただきます。最初に私からご報告し、その後関野さんと対談をします。人間として尊敬している関野さんとこうした企画をやらせていただけることが大変光栄です。

当日参加できない方のために、後日のオンライン視聴もございます。是非多くの皆様にご参加いただきたく思います。よろしくお願いします。

以下、ご案内、お申し込み先です。

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「地球永住計画 講演 〜賢者に訊く〜 小松由佳×関野吉晴」
【日時】2023年8月3日(木)19時00開始
※ 約120分で終了の予定ですが、質問への回答などによって若干延長されることがあります。
※ トイレ休憩や途中退席、退館など全く問題ございませんので各自自由に行ってください。
【会場】
武蔵野プレイス 4階 フォーラム(JR中央線 武蔵境駅より徒歩2分)

「地球永住計画 公開会場講演 〜賢者に訊く〜」
小松由佳(フォトグラファー)×関野吉晴(探検家・医師)
https://sites.google.com/site/chikyueiju/gakuen/daigaku/2023/komatsu2023

▼会場講演参加チケット(当日会場受付にて1500円を現金でお支払いください)

https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/012ew13x1b631.html
https://ws.formzu.net/dist/S110083468/

▼オンデマンド収録配信 視聴チケット(オンライン決済1000円)(8月19日配信)
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/015b9n3c1b631.html
https://chikyueiju-komatsu2023.peatix.com

ー講座概要ー

トルコ南部のシリア国境近くで2月6日に起きたマグニチュード7.8の地震やその後の大きな揺れにより、トルコとシリアの両国で大きな被害が出て、死者数は約六万人近くに及んだ。
小松由佳さんは以前から被災者への救援活動を行なって来ました。6月初め、それ以降の呼びかけで寄せられた救援金を持って、彼女の親族をふくめて、シリア難民の多く住むトルコ南部に向かった。そこで、地震被災者のキャンプに寝泊まりして、インタビューを重ね、6月末に帰国しました。今回は、その帰国報告会です。身体を張って見たこと、聞いたこと、感じたことを話して貰います。(関野吉晴記)

▼以下、小松由佳のコメント。
今年2月に発生したトルコ・シリア大地震。マグニチュード7の大きな揺れが2回発生し、両国で6万人近い犠牲者が出ました。それから4カ月が経った今年6月、被災地の状況を取材するためトルコ南部に向かいました。

大きな被害があったハタイ県アンタキヤでは、瓦礫の山になった高層マンションの跡地など、あまりの惨状を前に、言葉が出ませんでした。
毎年シリア難民の取材をしているシリア国境の街レイハンルでは、被災者キャンプに寝泊まりしながら人々のお話を聞きました。地震がどのように起き、どのように避難したのか。家族の一員や、生活を失った人々が、これまでをどのように過ごしてきたのか。

トルコ南部地域には2013年以降流入した多くのシリア難民が暮らしており、彼らの多くがこの地震で被災しました。現地では、トルコの法によって守られることのないこうしたシリア人被災者の苦境がますます深刻化しています。
取材では、地震大国の日本に暮らす私たちにとっても、災害時の教訓として心に留めるべき多くの気づきがありました。被災地や被災者たちの現状から、私たちにとっても共通する課題として、皆様と共に考えさせていただけたらと思います

(プロフィール)
小松由佳     こまつ・ゆか
1982年秋田県秋田市生まれ。ドキュメンタリーフォトグラファー。
米農家だった祖父母が田んぼで働く姿を眺めて育ち、近郊にそびえる秋田市の名山、太平山(1170m)に幼少時より憧れを抱く。高校登山部
にて初めて太平山に登り、山の世界に魅了される。
東海大学山岳部にて本格的な登山を学び、2006年、“世界で最も困難な山”と称される世界第2の高峰K2(8611m/パキスタン)に日本人女性として初めて登頂(東海大学山岳部 OB隊)。植村直己冒険賞受賞(2006年)。
次第に、風士に根ざした人間の営みに惹かれ、草原や沙漠を旅しながらフォトグラファーに転向。2008年よりシリアを撮影するも、2011年からのシリア内戦で人々の境遇の変化を目撃し、2012年よりシリア内戦・難民を取材。近年は3歳と6歳の子供連れで、「子連れパニック取
材」を行なっている。
著書「人間の土地へ」(集英社インターナショナル/2020年9月)にて、第8回山本美香記念国際ジャーナリスト賞受賞。2022年、第11回モン
ベル・チャレンジ・アワード受賞。シリア人の夫と二人の子供と東京都在住。公益社団法人 日本写真家協会会員。

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以上、皆様のご参加をお待ちしております。

またこちらとは別に、オンライン報告会の日程は、8月上旬に予定しており、まもなく決定いたします。以上、引き続き、よろしくお願いします。

小松由佳(2023年7月18日)

トルコ・シリア地震 帰国後の取材報告レポート♯1 〜レイハンルの地震被災者キャンプ、ケーンマウラーキャンプ〜

被災したシリア人をめぐる問題

6月に行った地震被災地のトルコ側の取材では、特に地震被害が大きかったトルコ南部のハタイ県を訪ねました。

(写真はいずれも、ハタイ県の県都アンタキヤにて撮影。高層マンションや家屋の多くが倒壊し、甚大な地震被害があった)

ハタイ県などトルコ南部には、2013年頃から多くのシリア人が難民として暮らしており、今回の地震でも多くが被災しました。こうしたシリア人被災者への対応が、現地では大きな問題になっています。

トルコでは、コロナ後の物価上昇を受け、大量に流入したシリア難民への不満が高まっており、難民をめぐる処遇が今年5月に行われた大統領選でも大きな争点にもなりました。

こうしたコロナ後に拡大した「反シリア人感情」が、現地のシリア人地震被災者への対応にも大きな影響を与えているようです。

例えばハタイ県では、(トイレやシャワー、台所などが付属した)コンテナハウスからなる公営避難所に入所できるのはトルコ人のみで、シリア人は入所できず、支援に大きな格差が生まれています。

(ハタイ県の公営被災者キャンプ。トルコ人のみ入所可能だ)

シリア人は自分でテントや生活用品を用意し、自分で空いているキャンプを探して入所しなければならず、法によって守られることのない立場の弱さが、地震後、特に表面化しています。

地震被災者のシリア人キャンプ、ケーンマウラーキャンプ

こうしたなかで訪ねたのが、ハタイ県レイハンルに造られた地震被災者キャンプ、ケーンマウラーキャンプです。入所しているのは全員がシリア人で、約70張りのテントに250人ほどが暮らしていました。

そのほとんどが、被害が大きかった県都アンタキヤからやってきた人々です。暮らしていた家が倒壊したり、家族を失くした人もとても多く、大怪我をして療養している人もいました。また、地震の影響を受けなかったものの、トルコ人家主によって貸家を追い出され(代わりに被災した親族を入居させた)、避難している人々もいました。

(シリア国境の街レイハンル。郊外の山の中腹に、国境のコンクリート壁が見える。その麓にケーンマウラーキャンプがある)

(ケーンマウラーキャンプ入口。郊外の空き地をレイハンル市から借りあげ、被災者キャンプを作った)

(NGOからパンが配布され、喜ぶ子供たち。このキャンプでは毎日パンが配布される。ときどき水や食料も配布されるとのこと)

(キャンプでサッカーをして遊ぶ子供たち)

キャンプを設立したのはトルコ人とシリア人の二人のオーナーで、行き場がなく路頭に迷っているシリア人被災者のため、地震から約一カ月後に、市から土地を借り、このキャンプを建設しました。

入所者は、テントや寝具などの生活用品を持ち込む必要があるものの、電気や水道、トイレ、24時間お湯の出るシャワー、洗濯機、台所などを使うことができます(ただしトイレやシャワー、洗濯機など数が少なく不便である)。

(入所者が暮らすテントの内部の様子。このテントに2家族が暮らしている)

(食器の洗い場)

(洗濯機が置かれたテント。250人の入所者に対し、洗濯機は3台のみ)

テントの学校

キャンプの一画に、テント製の学校がありました。中に入ると、机や椅子、ホワイトボードが並べられ、平日の午前中、6〜12歳ほどの子供たちがここで勉強をします。

授業中はテント内が高温となり大変暑く、子供たちがじっと座っているだけでも大変です。毎日学校に来るのは20〜30人ほど。学校の教師は二人おり、彼らもここに暮らす地震被災者です。

(英語の授業の様子。トルコの小学校では英語を学ばないが、シリアでは必須だったらしい)

教師の一人、モナ先生による英語の授業を見せてもらいました。もともとシリア中部のハマで小学校教師だったモナ先生は、トルコに来てからは10年近く専業主婦でしたが、地震後、子供たちに教育の機会を作りたいと、ボランティアで教壇に立っています。

「被災したシリア人の子供たちには教育の場がありません。学ぶ場が無くならないよう、私ができることで彼らを助けたい」。モナ先生はそう話します。

突然学校に現れた私たちに、子供たちは驚き、喜んだりでガヤガヤし、授業どころではなくなりました。英語の授業中だったため、英語で自己紹介をし、二人の息子たちと一緒に授業を受けることになりました。

キャンプの子供たち

キャンプに暮らす子供たちのなかには、地震で家や家族の誰かを失った子供もいましたが、そうした悲惨な境遇や悲しみをあまり感じさせない表情の豊かさがありました(このことについて、私はもう少し自分の頭の中で考えたいと思っています)。子供たちはみな好奇心が強く、先生の話をあまり聞かず、打たれ強く、天真爛漫でした。

テントの学校が蒸し暑く、じっと座っているのが困難なため、子供たちは授業中、20分おきに水を飲みに自分のテントに戻ります。しかしそのまま学校に戻らず、遊びに出ていく子供も。

(キャンプで輪になり遊ぶ子供たち)

キャンプに暮らす子供たちの楽しみは、組み立て途中のテントの骨組みにぶら下がり、鉄棒をすることや、テントの上に登って跳ねること。落ちれば大怪我をしますが、「危ないからやめなさい」とは誰も言いません。子供は危ないこともたくさん経験し、その危なさを自分で学ぶことが求められているようです。

(建てている途中のテントで、骨組みにぶら下がって遊ぶ子供たち)

一方、子供たちのコミュニティでは、大きな子が小さな子をしっかりと見守ります。小さな子を、近所の年上の子が抱っこしていたり、一緒に連れて遊んでいたり、というのが当たり前の光景です。こうした子供たちの世界に大人は必要以上に干渉せず、子供たちはある意味独立した存在です。

(テントの上に登りたい次男サラーム。手を伸ばし、お兄ちゃんたちに引っ張り上げてもらった)

私たちは長男のサーメル(7歳)と次男のサラーム(5歳)とともに、このキャンプで一週間テント生活を送りました。息子たちはその間、キャンプの子供たちと一緒に時間を過ごしました。

(キャンプで寝泊まりしたテント。(株)モンベル様からご提供いただいた)

(私たちの小さなテントは子供たちに大人気。毎日たくさんの子供たちが訪れ、エアマットの上で飛んだりはねたり大騒ぎ)

朝6時半、太陽の日差しでテント内が高温になり、自然に目が覚めます。暑くて寝ていられません。息子たちは私がまだ寝ているうちに外に出て行き、そのまま何時間も戻ってきません。探しに行くと、子供たちキャンプ内をゾロゾロと集団になって遊び歩き、かけっこ、鬼ごっこなど、自由に遊んでいます。

キャンプ内には車やバイクがあまり入ってこないので、交通事故に遭う危険もなく、みんな顔見知りのため、親たちも安心して子供たちを遊ばせます。

(仲の良い友だちと一緒のサーメルとサラーム)

(洗い場で、水のかけ合いっこをして喜ぶ子供たち。びしょ濡れになっても、日差しが強いので服がすぐ乾く)

被災者たちの行く先は

250人ほどが暮らすこのキャンプでは、台所の洗い場が2台のみ、洗濯機が3台のみとのことで、特に洗濯の順番をめぐり、いつもいさかいが起きていました。

そこで皆様から集めさせていただいた地震被災者支援金から、台所の洗い場を2台、洗濯機を2台、寄付させていただきました。

また子供たちの学校があまりに暑く、授業を集中して受けられない状況だと聞き、学校にエアコン1台を寄付させていただきました(学校には翌日からエアコンがつけられ、今度はエアコンの風が吹く最前列に子供たちがぎゅうぎゅう詰めになってケンカになっていましたが、以前より快適に、子供たちが勉強できる場になったと聞きました)。

ほか、暑さが大変厳しいなか、扇風機もない家族が多かったため、生活支援として扇風機を20台ほど寄付させていただきました。

キャンプを離れる最終日、学校で子供たちと鶴を折りました。みんなかなり苦労していましたが、一所懸命に参加し、全員が鶴を折って持ち帰りました。みんなで折った色とりどりの鶴に、今後、この被災地の子供たちがより良い暮らしへと向かうように祈るばかりでした。

(学校で、子供たちと鶴を折った)

ケーンマウラーキャンプに暮らすシリア人被災者たちの多くが、レイハンルに新たに貸家を借りて住みたいと希望しています。しかし、住宅需要が高まっているレイハンルでは、貸家の家賃が地震後に3〜5倍に値上がりしていることや、空き家自体がほとんどなく、家を見つけるのは大変困難です。

地震でほとんど全てを失ったキャンプの被災者たちにとり、この先の見通しが全く立たないまま、厳しい夏の日差しだけが容赦なく降り注いでいます。

7月5日、日本に帰国して一週間ほどの私に、衝撃的な知らせが届きました。ケーンマウラーキャンプの周辺住民(トルコ人)が、キャンプからの騒音がうるさいとのことで警察に被害届を提出し、市からキャンプの閉鎖を命じられたとの知らせでした。入所者は3日以内に退去しなければならず、キャンプ内は大混乱中だというのです。

背景にはトルコ人住民の、シリア人への排斥感情が少なからずあるようです。行く宛のない地震被災者の避難所が、「騒音」という理由で一方的に閉じられてしまう事態に、改めてシリア人をめぐる問題の難しさを感じさせられました。

*有料会員様限定オーディオプログラム

「ケーンマウラーキャンプ 裏話」

こちらは、有料会員様限定の裏話です。一週間のキャンプ生活で考えたことなど、以下の内容をオーディオにてお話いたします。

1  ケーンマウラーキャンプでの取材の思い出。経緯と注意点、生活の感想。

2   イスラム文化のキャンプ生活の厳しさ

3   キャンプ閉鎖に至った事件

〈視聴はこちらより〉

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NHK Eテレ『こころの時代〜宗教・人生〜』にて、私の出演回が再放送されます

NHK Eテレ『こころの時代〜宗教・人生〜』にて、私の出演回が再放送されます。

「生きる根を見つめて」 再放送:2023年7月8日(土)13:00〜14:00 (初回放送日:2022年8月28日)

https://www.nhk.jp/p/ts/X83KJR6973/episode/te/E2JRQNVRR2/

取材いただいたディレクターより、「こんなに言葉を語れるNHKの番組は他にはありません」と聞いていたこの番組。昨年のトルコ取材前に収録いただきました。なぜシリア難民を取り続けるのか。自分の人生にとってそれはどういった意味があるのか。インタビューいただきながら、私自身も気持ちを新たにしました。ぜひご覧ください。

(2023年7月5日)

あっという間に取材の日々が流れ、帰国してしまいました!(2023年7月5日)

6月中旬に取材の様子を投稿してから、その後の取材の経過を更新できないまま、6月末に帰国日を迎えてしまいました!涙

この取材では、現地から皆様に状況をレポートするのを楽しみにしていました。しかし取材の半ば頃から、だんだんと記事を更新する余裕がなくなってしまいました。

体調を崩しがちとなったことや(腹痛が続いた)、自由に動き回る子供たちのパワフルさにすっかりくたびれてしまい、とにかく日々、人に会い、話を聞き写真撮るという、やるべきことを続行するだけでいっぱいいっぱいになってしまいました。現地からコンスタントに、取材の様子をご紹介できなかったことが本当に残念です。

子供たちを元気に日本に連れ帰らねば、という責任感でトルコでは動いていましたが、帰国してからはどっと疲れが押し寄せ、数日間グッタリしました。このところ、ようやく回復してきたところです。

(シリア国境に程近いハタイ県レイハンルのケーンマウラーキャンプにて、テントに寝泊まりしながら取材。二人の子供たちは現地の子供たちと毎日倒れるまで走って遊んだ)

取材中は、地震被災者のキャンプで寝泊まりし、被災者の方々からお話を聞いたりと、忘れられない印象的なエピソードがいくつもありました。現地からのレポートができませんでしたが、帰国したからこそじっくりと、こうした取材中のエピソードをご紹介できたらと思います。

さて、帰国してホッとしましたが、これからが正念場です。報道が少なくなってきた地震被災地の現状について、多くの方々に引き続き関心を持っていただきたく、雑誌や新聞などに寄稿させていただく予定です。

本日はひとまず帰国のご連絡でした。更新がないことで皆様にもご心配をおかけしたかと思います。申し訳ありませんでした。

(主要な取材地であるトルコ南部ハタイ県レイハンル。この街の地震被害はさほど大きくなかったが、被害が大きかったアンタキヤなどから多くの被災者が避難している)

(ここからは裏話です)

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