ESSAY

小松由佳

パルミラの民家に残る、イラン軍の兵器庫

(こちらの記事は、引き続き、シリア取材の報告です) シリア中部の夫の故郷パルミラは、世界遺産パルミラ遺跡が残る、古代からのオアシスとして知られています。しかしこの14年間にわたる内戦状態の日々の中で、大きな混乱と破壊を経験した街でもあります。 2011年頃のパルミラの人口は約10万人とされていますが

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イスラエルによる空爆で破壊された、パルミラのイラン軍の施設

(*こちらの記事は、一般の皆様にも公開させていただきます。写真は簡易編集・低画素のものです。) 2024年11月20日の午後のことです。シリア中部の街パルミラに突然、大小異なる二機の戦闘機が飛来し、大きな戦闘機から数発のミサイルが発射されたのです。その様子を、パルミラの住民たちは家の外に出て、大騒ぎ

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13年ぶりの故郷、パルミラに立つ夫ラドワン

「自分が生きているうちは、二度と故郷パルミラの土を踏むことはできないだろう」。そう話していた夫が、とうとう故郷に立つことのできる日がやってきました。 夫は2012年に脱走兵になった罪から指名手配を受け、アサド政権が倒れない限りは二度とシリアには入れない身だったのです。 ▼ 私の夫、ラドワン・アブドュ

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小松由佳

「私たちはサイドナヤの囚人だった」〜サイドナヤ刑務所での5年半を元囚人に聞く〜

(*注意 こちらの記事には、やや過激な内容が含まれています) (*こちらの記事は、一般の皆様にも公開させていただきます) 古来から交通の要衝として繁栄した、シリア中部の大都市ホムス。そのハールディーエ地区に、2024年12月19日、二人の男性を訪ねた。周囲には、崩れ落ちた高層住宅が延々と続き、この瓦

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マルジェ広場の行方不明者たち〜殉教者の地に家族の行方を探す人々〜

(*現在、アサド政権が崩壊したばかりのシリアに取材に入っています。こちらは取材した内容です。地方にいるためインターネットがあまり使えずにおります) シリアの首都ダマスカスの中心部にあるマルジェ広場。人々が賑やかに集うこの場所は、ここは二度にわたる〝殉教〟の地として知られています。 シリアがオスマン帝

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小松由佳

ここに、サーメル兄がいた〜アサド政権の抑圧の象徴、サイドナヤ刑務所へ〜

(*注意:この記事には、やや過激な内容が含まれますので、ご注意ください) (*こちらの記事は、有料会員様以外にも公開させていただきます) シリアの首都ダマスカス郊外、人里から離れた小高い丘の上に、その刑務所がある。その巨大さは、遠方から見るだけでも確認できる。周囲では時折、羊の群れを連れた羊飼いの姿

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サイドナヤ刑務所に生きていた兄、サーメル

シリア人ならば、「サイドナヤ刑務所」の名を知らない者はいません。 首都ダマスカス郊外にあり、常時1000人以上が収監されていたとされるこの刑務所は、アサド政権による抑圧の象徴として、恐れられてきました。 2011年以降、シリアではアサド政権反対派を中心とする約13万人以上が政府軍によって拘束され、国

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シリア大使館の二つの国旗と、アサド政権崩壊の影響

ロンドンに到着するなり、シリアのアサド政権の崩壊を知った今回の取材。すごいタイミングでヨーロッパ取材が始まり、ザワザワした心境で取材1日目をスタートさせました。 イギリスに着くなり、息子(8歳)が日本に帰りたいと言い出し、日本にいる夫(2012年にシリアから逃れた難民の一人)もシリアに帰りたいと言い

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小松由佳

ジャマール兄と過ごした11月

我が家では今、夫の兄のジャマールが居候中だ。普段、ただでさえ、シリア人の夫との日常がサスペンス劇場状態であり、二人の子供の育児はパニック状態だったが、ジャマール兄の居候によってパニック度合いはさらに高まり、しばらくただ日々を懸命に送ることにいっぱいいっぱいであった。以下は、その兄との生活を振り返って

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小松由佳

K2に逝った先輩を偲んで

その一報を受けたのは7月28日のことだった。 K2西壁の未踏ルートに挑んでいた平出和也さん(45)と中島健郎くん(39)が、7000m地点から墜落した、という知らせだった(*)。聞けば、27日午前11 時半頃に墜落、約1000m落ちて、体は約6000m地点にあるのが確認できているという。その時点で2

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沖縄の記憶

「白旗の少女」 子供時代に読んだ本で忘れられない一冊がある。その本の表紙には、ボロボロの服を纏ったおかっぱ頭の女の子が、一方の手に白旗を持ち、一方の手を振る写真が載っている。当時7歳だった比嘉富子(ひがとみこ)による沖縄戦の回想録「白旗の少女」だ。 太平洋戦争末期の1945年6月、米軍が上陸した沖縄

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小松由佳

〝みんなのおじちゃん〟になる 〜在日コリアンの元プロサッカー選手、安英学さんの挑戦〜

在日コリアンのサッカー選手、安英学(アン・ヨンハ)さん JR横浜駅から、閑静な住宅地にある見晴らしの良い高台を目指す。在日コリアンの元プロサッカー選手、安英学(アン・ヨンハ)さんとのご縁で、あるサッカースクールを訪ねるためだ。 安さんは在日コリアン3世。アルビレックス新潟や名古屋グランパスエイト、大

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新年、あけましておめでとうございます

皆様、あけましておめでとうございます。2024年がやってきました。私はこの新年を、イギリス南東部、ドーバー海峡を臨む港町ドーバーにて迎えました。新年を取材地で迎えられる幸せ。取材に連れている二人の子供たちも毎日元気いっぱいです。 昨年2023年は、振り返るととても愛しい一年でした。 年始めから長く胃

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イスラエルとガザの衝突から一カ月(2023年11月15日)

11月15日。ガザを実効支配するハマスが大規模攻撃を仕掛けてから一ヶ月と7日が経過した。ガザをめぐる状況は、悲惨の一言に尽きる。インフラがほぼ遮断された状況で、ガザの人々は一方的な避難を余儀なくされ、空爆は続き、ガザ側の死者は増え続けている。イスラエル軍はハマス壊滅を謳って地上進侵攻に踏みきり、ガザ

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小松由佳

福島の被災地へ① 〜あの日は終わらない〜

この8月、震災以後初めて、福島の被災地を歩きました。2011年の東日本大震災と、その後も福島で続いている放射能被害についてずっと気になってはいましたが、触れることができずに時間が流れていました。今回、お盆に秋田の実家に帰るため、鈍行列車で三日かけて北上し、その途中で福島の被災地を訪ねました。 これま

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『月刊みんぱく』2023年8月号に寄稿させていただきました

大変光栄なことに、国立民族学博物館発行の月刊誌『みんぱく』(2023年8月号)様に寄稿させていただきました。 〜「人々は嘘をついているのではなく、「あえて真実を語らない」。いや「語れない」のだ。それが、このシリアを生きなければならない彼らからの、見えないメッセージなのだ。〜(文中より) (『月刊みん

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終戦の日、ご紹介したい一冊

8月15日は終戦の日。あの戦争から78年が経ちました。戦争は終わりましたが、戦争が残した傷は、今もその時代を生きた人々や戦後を生きた人々の中に消えずに残っています。戦争の悲惨さは、長期間にわたって人間を苦しめ、境遇を左右し続けることでもあります。終戦の日を迎え、是非皆様にお薦めしたい一冊があります。

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小松由佳

2月6日に発生したトルコ大地震。夫の親族や知人が多数被災しています。

トルコ南部で6日午前4時17分(日本時間同日午前10時17分)にマグニチュード(M)7.8の大地震が発生しました。この地域には、シリア難民である夫の親族が多数暮らしており、私が毎年難民の取材を行ってきた地域でもありました。 コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。 お願い Log In.

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今年も8月6日と8月9日を迎えて

20世紀ジャーナリズムの最も重要な一冊とされる本がある。米国のジャーナリスト、ジョン・ハーシーによる『ヒロシマ』だ。 1945年8月6日、広島に、そして8月9日、長崎に原爆が投下された。米国では、戦争の勝利に人々が熱狂するも、原爆が市民の上に落とされたことや、そこで何が起きているのかを全く知らされる

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念願の京都国際写真祭、キョウトグラフィーへ

京都を舞台に年に一度開催される国際的な写真祭があります。その名も「KYOTOGRAPHIE (キョウトグラフィー) 京都国際写真祭」。今年は4月9日から5月8日にかけて開催されました。この期間、京都市街地の数多のギャラリーで、素晴らしい写真展示やイベントが行われます。このキョウトグラフィーに、ついに

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小松由佳

「呼ばわり山」の夜道の事件

2022年3月のある日、春風に誘われた。山に行こう。 早速おにぎりを握り、ザックにお菓子を詰め、3歳と5歳の二人の子供を連れて郊外へ。目指すは東京都八王子市のはずれにある今熊山(いまくまやま)。標高505メートルの今熊山は、八王子では知られた低山で、かつては「呼ばわり山」として、失踪した人を呼び寄せ

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小松由佳

「続 人間の土地へ」

人間は、未知なるものに惹かれ、それを知ろうとする存在だ。例え先が見えず、大きなリスクが待ち受けているとしても、見たことのない世界を見たいと願い、知らないことを知ろうとする。そして、私もまたそうした一人でありたいと思ってきた。

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小松由佳

コロナの傘の下とアリさんのおうち

新型コロナウィルス。その名を初めて聞いたのが今年1月。それから、あれよあれよと言う間に感染は広がり、社会も生活もすっかり変わってしまった。緊急事態宣言こそ解除されたが、今なお私たちは見えないコロナの傘の下にあって、いかにひとつのつながりあった世界に生きているかを感じさせられる。

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