突然ですが、本日からイギリスへ 12月24日〜1月13日

突然ですが、本日からイギリスへ、シリア難民の取材に行ってきます。こうして皆様に取材のお知らせをお送りしておりますが、2時間後にはスーツケース詰め込みを完了させ、3時間後には羽田空港に向けて出発しなければいけません。しかし、準備がまだ半分ほどしか終わっていません。そのうちのひとつとして、やるべきことの最重要の準備の一つが、この有料コンテンツの配信です。ということで、今、気合を入れて、部屋で暴れ回っている子供たちを尻目にパソコンを打っています。

10月以来、ガザとイスラエルで起きていることについて大変悶々とし、皆様にもその思いをご相談させていただきました。しかし、自分がいま何をするべきかを考えるとき、これまで続けてきたことを懸命に、淡々と続けることで、自分の立場からできることを頑張りたいと思いました。

そうしたなかで、かねてから取材を考えていた、「ヨーロッパへ不法移民として渡ったその後のシリア難民」をテーマに、12/24〜1/13までイギリスへ向かうことに決めました。実は、目的地が物価の高いイギリスであることや、今回も二人の子連れとなるため、費用や効率を考えて直前まで躊躇しましたが、今しか見れない世界を見ること、それを写真で記録していくことを改めて考え直し、やはりこの時期に行くことに決めました。

何故今なのか。それは、この春から長男が小学生になり、基本的には小学校の休みに合わせて取材に出ることにしたためです。そうなると私には、夏休み、冬休み、春休みが取材対象期間であり、この冬休みも、長期取材に向かえる貴重な時期なのです。

長男サーメル(写真手前)を抱っこするエブラヒム(写真後ろ)。トルコ南部オスマニエにて。2020年撮影。エブラヒムは2022年夏、13歳で(!!!)ヨーロッパへ渡った。現在、ロンドン北部の街に暮らしている。
夫の兄、アブドュルメナムと三人の子供たち。2022年8月撮影。この写真を撮った翌日、ヨーロッパへ渡る旅へと出発した。トルコ南部オスマニエにて。現在はエブラヒムと一緒に、ロンドン北部の街に暮らしている。

以下、取材の概要です。

取材テーマ

「ヨーロッパに不法移民として渡ったシリア難民のその後」

取材時期

2023年12月24日〜2024年1月13日

取材内容

  • 不法移民としてイギリスに渡ったシリア難民が、今どのように過ごしているのかリサーチ。
  • 実際に、昨年夏にトルコを出発し、秋にイギリスに渡った夫の兄や甥を取材。
  • ドーバー海峡をどのように渡ったか、フランス側・イギリス側の街を歩き、不法移民が海を渡る施設や痕跡を取材。

取材者

小松由佳(41)・長男サーメル(7)・次男サラーム(5)

目指す写真

「一枚の写真に、その人の人生が浮かび上がってくるような、そんな写真が撮りたい」

項目別取材予算

さて、この取材に向け、最も準備に時間を要したのは、なんといっても取材費です。

これまでのトルコやシリアと異なり、物価が大変高いイギリスへの取材は経済的にかなり大変で、取材費は約2倍かかります。実りある取材のため、心を鬼にして、大切にしていたフィルムカメラを2つ、レンズを3つ、中古カメラ店に売り(涙)、金策に励みました。

このイギリス取材の経費は以下のように計画しています。

▼航空券代 中国東方航空 310000円(大人1名+子供2人  3人分往復)購入済

(意外とリーズナブルでしたが、三人分となるとやはり高いです)

▼宿泊費

150000円

(子連れであることもあり、宿泊費はかなり高額。節約を心がけます)

▼交通費

50000円(電車やバスでの国内移動費)

▼食費

50000円(可能な限り自炊します)

▼取材お礼費

70000円 

(長時間取材のお礼、コーディネート代、通訳代など)

▼その他、交際費、雑費

30000円

▼▼合計 660000円 ▼▼

(絶対に、これ以上は使わないように心がける)

「そこに人間がいるから」

今回、この「ヨーロッパに不法移民として渡ったシリア難民のその後」取材の内容を発表させていただける媒体が新聞、雑誌などで3つほどあり、大変ありがたいとこではありますが、その原稿料・写真使用料を回収したとしても、収入は、取材経費660000円の半分にもなりません。こうした取材は常に、経済的には完全に赤字覚悟で、ただ自分の表現の経験を積むため、伝えていく行為を続けるため、取材に向かうという形です。

かつて、イギリスの登山家マロリーが、「なぜ山に登るのか」と聞かれて「そこに山があるから」と答えたことが知られていますが、私は「なんのために写真を撮るのか」と聞かれたら、「そこに人間がいるから」と答えたい心境です。今しか見ることができない世界、今しか撮れない人間の姿がそこにあるから、取材に向かいます。

今回は特に、不法移民としてイギリスに渡った兄や甥の取材がメイン取材です。彼らがその後、ヨーロッパでどのように難民としての一歩を踏んでいるのか、その記録となります。

しかし、数日前に、その兄に電話で話をしたところによると、兄は一年近く難民収容施設のホテル住まいですが、すでに時給2500円ほどで「ウーバーイーツ」で働き始め、貯金もだいぶ溜まっているようです。私に「イギリスはなんでも高いから、お前たちはお金ないだろう。飯をおごってやる」という話もし、なんと、この一年で、小松ファミリーよりも貯金を蓄えているようなのです。それを聞き、諸行無常の理を感じるとともに、シリア人たちが命をかけてヨーロッパに渡っていく、その先にある夢や理想、安定の姿を感じましたし、正直なところ、私もイギリスに出稼ぎに行きたくなりました。ウーバーイーツの配達で時給2500円!(ちなみに日本では、というより私が暮らす東京都八王子市では、自転車でのウーバーイーツの配達は、今や時給400円くらいです)。

以上、イギリス取材の概要でした。

まだほとんど準備が終わっていないにも関わらず(さすがにこれは大変!)、この晴れやかな気持ちはなんなのかと考えると、今回は中東地域ではなく、ヨーロッパに向かう、という心理的背景が大きいことにも気づきました。ここ10年ほどは、毎年中東地域に向かい、特にここ5年ほど撮影してきたトルコ・シリア国境地域は、カメラを持って歩いているだけで警察に連行されるような(国境のため基本的に屋外での撮影は禁止だった)政治的・地理的に複雑な土地でした。さらにイスラム文化を撮ることへのリスペクトと障壁の間で葛藤してきましたので、今回の取材地では、そうした「写真を撮るうえでの自由への渇望」から解放されるような、そんな気さえするのです。

私にとって初めてのイギリスです。二人の子供と、元気に出発します。では、行ってきます!!

(2023年12月23日)