〜写真展5日目が終了。心境の変化と写真家の先輩からの学び〜

本日は写真展が始まって5日目でした。会期が24日月曜日までですので(火曜水曜はギャラリー休)、写真展も半分過ぎたことになります。私は全日会場で10時から18時まで在廊しており、あっという間に毎日が過ぎております。

毎日、本当にたくさんの皆様にお越しいただいております。嬉しく、恐縮な限りです。皆様、どうもありがとうございます。

早く次に行かねば

写真展が始まって2日目までは、発表の場がある喜びと充実感でいっぱいでした。しかし3日目にはその高揚感が去り、また違った心境へと変化しています。

写真展はギャラリーという空間のなかで、それも時間をかけて自分の写真や演出と対峙することです。それゆえ、そこに立ち、目を見開くことで、自分の表現に何が足りないのかがだんだんと明確になってきました。まだはっきりと言語化ができていませんが、もっと突き抜けたもの、独自の視点、表現法、そうしたものの改革が必要だと感じています。

とにかく、まだまだ足りない、と思えるのです。前からそう思ってはいたのですが、写真展をやり、その足りなさをさらに実感中です。すでに心は次の制作へ向かっています。早く次に行かねば。そんな心境です。

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(15日土曜日のギャラリートークの様子。シリアに向かうことにしたタイミングや、秘密警察の監視下での危険で困難な取材についてお話しました。次回ギャラリートークは22日土曜日です)

展示についてのお客様からの感想

ご来場いただいた皆様から、沢山のご感想もいただいております。シリアやパルミラを訪れたことのあるお客様も多く、現在のパルミラの写真を見て、涙を流される方も。

また、「あなたは ここにいた」という写真展のタイトルですが、そこに「ING」がついているのではないかと感じる、というご意見などもありました。そんなたくさんのご意見があって、大変嬉しいです。

今回の展示は、パルミラというある難民の故郷をめぐるストーリーです。そして彼らがかつてそこにいたということを、写真を見た一人一人がどのように捉えるのか、それは全く自由で、むしろ私はそれを、見る人一人一人に委ねたいと思っています。

「あなたは ここにいた」ではなく、「あなたは ここにいる」ではないか。

「あなたは ここにいるし、ここにいない」ではないか。

「あなたは ここにい続ける」ではないか。

そうそう、どれもその通り。故郷を失うこと、難民となることについて、それぞれが独自のイメージでなにか本質的なものに触れてほしい。それこそが、この展示での私の願いです。

以下は、写真展会場で配布している資料です。その名も「 写真を読み解く 」。展示に目を凝らし、写真に込められた作者からのメッセージを想像いただいています。そこに明確な答えはありません。写真の枠の外の世界を想像していただくことが狙いです。

30年前のパルミラの写真をいただき、感動しました!

「もうこの写真、もう捨てようと思っていたから」と、30年近く前のパルミラでの写真をお客様にいただきました。1993年9月、と表示された写真。ツアーコンダクターだった、というお客様が、パルミラの遺跡や街で撮影した在りし日の写真です。

2015年に過激派組織ISによって破壊される以前の荘厳な遺跡の姿、道を歩く女性たちの時代を感じる服装、砂漠から昇る今も変わらないオレンジ色の太陽。全てが、フィルムカメラで丁寧に撮影されたもので、80年代、90年代のあの時代の匂いがプンプンする、うっとりする写真でした。

大変に貴重なものをいただいたことに恐縮しつつ、これらの写真は、会場中央の机にて展示させていただいております。

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(お客様からいただいた、時代を感じる、しかし素晴らしい写真の数々。宝物にします)

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写真家、石川武志さんからの学び

いつもお世話になっている写真家の石川武志さんがご来場くださり、大変大きな学びをくださいました。

石川さんは、あのユージン・スミス(*)の助手として、共に水俣を撮影したことでも知られ、また長年インドなどでの民族、祭り、宗教などを撮影してきた写真家です。最近では、今回の私の写真展と同じ会場で、一年前に写真展「MUMBAI HIJRAS(ムンバイ・ヒジュラ)」(*)を開催されていました。

*ユージン・スミス https://ja.wikipedia.org/wiki/ユージン・スミス

*石川武志さんによる写真展「MUMBAI HIJRAS(ムンバイ・ヒジュラ)」 ↓

(石川武志氏)

1950年愛媛県生まれ。1971~74年ユージン・スミスのアシスタントとして水俣を取材。1975年渡米、以後フリーランスとなる。1978年シルクロードの取材を期にアジアの祭りや民族、宗教、遺跡などを取材。1980年インドでガンジス河巡礼の取材を開始。1982年インドのトランスジェンダー社会「ヒジュラ」の取材を開始。1987年ハイチのブードーやブラジルのカンドブレなどを取材。2008年再び水俣の取材を開始。

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(石川武志さん)

その石川さんから、

「時代や媒体を越えて、作品が一人歩きするような一枚を撮りなさい」

とお話いただきました。例えば有名なスティーブ・マッカリーの写真「アフガニスタンの少女」(*)のように、素晴らしい作品は一人歩きして残っていく。そういう一枚を撮りなさい、と。

*「アフガニスタンの少女」

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20131001/367287/?ST=m_column

また、柱となる写真はどれかを示し、それを効果的に見せることについてもお話しいただきました。「ユージンスミスも、それをものすごく意識していた」、と。

今回の写真展では、自分なりに〝柱となる写真〟を意識はしていたものの、まだまだ足りないと思いました。石川さんがおっしゃる、〝一人歩きしていく素晴らしい一枚〟はそこにはない、と。

「本当にいい写真は、一人歩きして残っていくから」。その石川さんの言葉が心に響きました。この言葉を手帳に書き留めた私は、そうした写真を撮ろう、と思いを新たにしました。

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(この写真展は、子どもたちにこそ見てほしい展示です。知人の子どもに、展示物についてお話ししました。「これは何かな〜?」「どうしてこうなってしまったのかな〜?」)

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(子どもたちは写真よりも、目の前にある「モノ」に興味津々です。是非、触れて、考えてみよう。感じてみよう)

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(フォトジャーナリストの桃井和馬さんが、二人の子どもを連れて写真展にご来場くださいました)

(2024年6月17日)