写真展「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」が14日から始まりました!搬入日から、あっという間に時間が流れております!
2021年12月に、富士フォトギャラリー銀座様にて行った写真展『シリア難民 母と子の肖像』以来、約2年ぶりの写真展となります。写真点数も60点ほど用意し、経済的にも、エネルギー的にも全力投球しました。改めて、写真展を開催させていただく大変さと、発表の場がある喜びを満喫しています。
今回の写真展は、2022年に11年ぶりに行ったシリア中部のパルミラ取材の記録でもあり、2021年に帰郷を果たせずに亡くなった義父ガーセムへの鎮魂の表現でもあります。現地では、秘密警察の監視下に常に置かれたり、自宅軟禁に遭ったりと危険な思いもしました。こうしたパルミラ取材が、写真展としてしっかり発表できるということに充実感と安堵感を感じております。やっと、ここまで来れた、という思いです。ここまで応援いただき、支えてくださった沢山の皆様に感謝しております。どうもありがとうございます。
ただ、今回のようなメーカーギャラリー様での写真展は、私の場合、会場費や写真パネル制作費、宣伝費などを合わせ、経費が100万円以上かかる一大プロジェクトです。
経済的な事情から毎年の開催は難しく、またここしばらくは取材により力を入れてきたこともあり、今回は2年ぶりの本格的な写真展となります。
次の展示は、恐らくまた2年後になりそうですので、この展示では、是非多くの皆様にご来場いただけますと嬉しいです。
本日は開催3日目。一昨日も昨日も、本当に沢山の皆様にご来場いただきました。皆様、どうもありがとうございます。日々、発表の場に立つことの喜びと充実感とを噛み締めております。
展示をしてみると、新たにさまざまな課題が見えてきました。
伝えたいことが、展示のなかに示されているか。そのうえで、見る側に「委ねる」ことができているか。この「委ねる」という部分がとても大事です。写真家の役割は、答えを示すのではなく、あくまで問いを投げかけるこただと思っているからです。
目指す表現に向かい、展示が始まっても、終了する瞬間まで模索は続いていきます。ですので写真展の完成は、写真展が終わる瞬間です。
改めて、空間の中で表現を作り上げる写真展の奥深さを感じております。いかに撮り、いかに写真に込められたメッセージを発していくか。今後も学びがあるのみです。
本日の夕方、ちょうど来日中のシリア人女性作家であり、活動家のサマル・ヤズベク氏がご来場下さいました。サマル氏は『無の国の門』という、世界14カ国で翻訳されたノンフィクション本を執筆した作家として知られています。
すでに作家として知られていたサマル氏は、2011年に始まったシリア反体制運動で、反体制・反アサド政権の立場をとり、逮捕・拘束を経て、同年夏にシリアを脱出しました。
その後も2012年8月から2013年7月まで、3度にわたって祖国に戻り、兵士から女性や子供まで、反アサド政権の立場にあるさまざまな人々の声を集め、その体験を本に書き綴っていきます。
こうして出版された『無の国の門』は、世界14カ国で翻訳され、シリアで起きている真実を世界に知らしめることに繋がりました。現在はパリに暮らし、シリアの女性を支援する活動も続けています。
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○『無の国の門〜引き裂かれた祖国シリアへの旅〜』
(以下、白水社のサイトから引用)
https://www.hakusuisha.co.jp/smp/book/b498044.html
〜挫折をいかに理解し、未来へつなげていくか
記録を通じて内戦の過酷な現実と向き合う〜
祖国を逃れた作家が一時帰還し、反体制派の人々の苦悩と挫折に耳を傾ける。記録する行為を通じて内戦という過酷な現実と向き合う労作。
内戦下の祖国シリアに一時帰還した作家が、絶え間ない爆撃の下、反体制派の人々の間で暮らしながら、それぞれの苦悩と挫折に耳を傾けた1年間の記録。語り伝えることを通じて、内戦の過酷な現実と向き合う、世界16か国で翻訳された話題作。
アサド大統領と同じくイスラーム教アラウィー派に属する一族の出身である著者は、2011年以降、一貫して反アサド政権の立場をとり、逮捕・拘束を経て同年夏にシリアを脱出した。本書は、2012年8月から2013年7月まで、3度にわたって祖国に戻り、兵士から女性や子供まで、反アサド政権の立場にあるさまざまな人々の声を集め、その体験を書き綴ったものである。
拠点としたのはシリア北西部のイドリブ県サラーキブ市で、住民である協力者一家の庇護を受けて取材を進めた。証言者の数が増えていくと同時に戦況は変化し、協力者一家の大半は出国を余儀なくされていく。
小説家、ジャーナリスト、編集者として活躍するかたわら、著者は女性の自立や子供の教育を支援するNPO団体を設立し、活動を続けている。近年のシリアを見据える新しい世代の特色を鮮やかに示すと同時に、内戦下で生きる市井の人々の声を拾い上げた記録文学の白眉。
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サマル氏は、シリアでも大変著名な作家とのこと。私の夫もサマル氏を知っており、同じシリア人としてのメッセージを託されました。
「シリアの人々の声を、世界に伝えてくれてありがとうございます」
そのメッセージを、私は大事にサマル氏に伝えました。サマル氏は、「ありがとう。あなたをハグしてもいい?」と言い、ハグして下さいました。長い間、誰かとハグしたことがないことに気づいた私でした。
サマル氏に、お聞きしたいことがありましたが、その答えを私はすでに知っているようにも感じました。
「報道の光が当たらないシリア問題を、どのように見つめ続け、足を運び続けたら良いでしょうか」。
それはただ、信念を持って続けていくだけよ。そうサマルさんが答えるだろうと、私は分かっていました。とにかく思いを持ってひたすら続けていくだけ。その先に道は開けるのです。私も撮り続けていこう。さしたる深い話はできませんでしたが、サマルさんにお会いし、撮り続けようという思いがまた新たになりました。
さて、本日15日は14:00からギャラリートークがございます。24日の写真展終了日まで、会場にて毎日在廊予定です。皆様、どうぞよろしくお願いします。
〈皆様へ〉
写真展開催にあたり、大変恐縮ながらカンパを集めさせていただくことにしました。写真展には膨大な経費がかかります。今後も取材と発表を継続してより良い形で行っていけるよう、是非応援をよろしくお願いします。
▼写真展 経費の応援カンパをよろしくお願いします
〈写真展 応援カンパお振込み先〉
三井住友銀行
八王子支店
普通
8495661
コマツユカ
大変恐縮です。どうぞ宜しくお願いします。
小松由佳
写真展『あなたは ここにいた〜燃やされた故郷、パルミラ〜』は、壁の四面を使い、ストーリーが組まれています。
こちらでは、トルコで難民として暮らすパルミラ出身者のポートレートを展示しています。彼らがどのように故郷と繋がって生きているのかを聞きました。
夫のパルミラの実家から持参した、爆撃で破壊された床や壁、天井の破片を展示しています。写真だけでなく、実体を見て触れることで、作品の世界観により入っていただけたらと思います。
パルミラでの取材では、荒廃した夫の実家を訪ね、残置物を撮影しました。私はそこで、驚くべきものを見つけるのです。