4月30日は、探検家であり人類学者の関野吉晴さんの講座「地球永住計画」にて、1月に行った不法移民の取材報告会を行わせていただきました。会場の皆様からのたくさんのご質問にお応えしつつ、さまざまな議論を交わさせていただいた素晴らしい時間でした。
この取材では、例年の子連れ取材パニックに加え、イギリスの物価の高さや思わぬハプニング(スーツケースが3日ほど行方不明になったり、財布を盗まれた)に呆然としつつ、一年前にトルコからイギリスへ、不法移民として渡ったシリア人の夫の兄や甥を取材。難民収容施設で暮らす彼らの葛藤や孤独を知りました。
また、フランスの港町カレーでは、ドーバー海峡を渡るために船を待っていたシリア人移民たちが、ボートの転覆事故で亡くなるという痛ましい出来事もあり、忘れられない取材となりました。
人々は、何故命をかけ、土地から土地へと移動をし、海を渡っていくのか。その先に何を夢見ているのか。単に不法移民としての問題にとどまらず、人間とはどういう存在なのか、また人間の尊厳や自由、平等についても、大変に考えさせられました。
また取材後は、季刊誌『Kotoba』(集英社インターナショナル)様や、朝日小学生新聞様に取材内容を寄稿させていただき、大変光栄でした。イギリスに渡っていった兄や甥たちが、今後どのようにイギリス社会で生きていくのか、これからも、取材資金が続く限り(!)取材を続けます。
しかし、こうした不法移民をめぐる情勢は、今日、大きく変化しつつあります。 イギリスでは、相次ぐ不法移民の流入に頭を悩ませており、大量の移民をどう受け入れていくのか、イギリスでは大きな議論が交わされてきました。2023年には、過去最高の約3万人の不法移民がドーバー海峡からボートに乗って入国し、そのほとんどが難民申請をしています。
こうしたなか、この3月末には、不法移民として入国した人々をアフリカのルワンダに移送する法案が、イギリス議会でついに可決されました。現地では、すでに移送の動きが始まっています。 残念ながら、私がカレーで出会ったシリア人移民たちも、このルワンダ移送計画の対象者となっています。
ルワンダは、1994年に起きた虐殺(100日間で約100万人が殺害されたとされる)や内戦から立ち直り、アフリカ第二の経済成長が見られる国です。 イギリス政府は、ルワンダへの膨大な経済支援の見返りとして、また今後の不法移民の流入の抑止力とするため、このルワンダ移送を進めたい狙いがありますが、人権団体などは、〝難民にとって安全な環境とはいえない〟として移送に反対しています。
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「不法移民をルワンダ強制移送へ イギリスで法案成立…身柄拘束する映像を公開【ワイド!スクランブル】(2024年5月4日)」
https://youtu.be/nXO8VArbIUM?si=vPZOksykhZNX1YwY
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こうした不法移民の問題を知るにつけ、私は彼らの故郷が紛争などによって荒れ果て、彼らが暮らしを失っていった最後の選択肢が、「移動すること」であった現実を思わずにいられません。
移民問題は簡単に答えの出ない難しい問題ではありますが、この難しさのなかで考え続けることしかないのだと思います。
改めて、今回の不法移民の取材に対し、見守り、応援くださった皆様、本当にどうもありがとうございました。今後も激動の世界を見つめ、それぞれの土地に生きようとする人間のエピソードを伝えていく活動を続けていきます。引き続き、どうぞよろしくお願いします。
*お知らせ*
2024年5月18日(土)20時からは、地球永住計画での取材報告会の見逃し配信があります。自分で言うのもなんですが、とてもまとまった取材報告ができました。興味のある方は是非ご視聴ください。
オンデマンド収録配信チケットは1500円です。以下よりお申込みください。
「地球永住計画 オンデマンド収録配信 〜賢者に訊く〜小松由佳(フォトグラファー)×関野吉晴(探検家・医師)」 ・オンデマンド収録配信視聴チケット1500(5月18日配信) https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01wcg2y9pqp31.html または https://peatix.com/event/3916508/view 詳しくは公式ウェブサイトをご確認ください。 https://sites.google.com/site/chikyueiju/gakuen/daigaku/2024/komatsu2024
(2024年5月8日)