開高健ノンフィクション賞 贈賞式スピーチ原稿
「壇上には違う世界がある」。何百名の招待客の前で語った5分間の記録。
The 23rd Kaiko Takeshi Non-fiction Award
第23回開高健ノンフィクション賞 受賞作
小松 由佳
いつか必ず、家族のもとへ。
シリアの沙漠で出会った家族と歩んだ16年間の記録
2011年、市民による民主化運動から始まったシリア内戦。「今世紀最悪の人道危機」と呼ばれる騒乱の中で、私の夫、および彼の家族もまた、故郷を追われ難民となりました。
ひとくくりに「難民」と称される人々にも、一人一人唯一無二の物語があります。本書は、私が彼らとともに歩んだ、16年間の記録です。
Photography by Yuka Komatsu
ドキュメンタリー写真家としてヒマラヤの頂を目指した著者が、次に見つめたのは「沙漠の民」の暮らしでした。
シリアの沙漠で出会った70人の大家族。その十二男と恋に落ち、難民となった彼と結婚。 秘密警察の監視、親族による軟禁、そして2024年12月のアサド政権崩壊……。
次男を可愛がってくれたエイハム。船出した彼は、沈没事故により帰らぬ人となった。
2024, France
「NEVER GIVE UP UK」。イギリスを目指す移民たちが野宿する壁に残された言葉。
2024, France
「移民・難民」という立場へ追い込まれていく人々のありのままの姿。
最後の希望にすがるように旅を続けていた彼らの思いを、私は忘れない。
第23回開高健ノンフィクション賞 選評より
「書き手自身を取り巻く『人間』を、シリアの政治と歴史への深い理解とともに厚みをもって描ききった。」
加藤 陽子
Historian
「大家族の幸せな記憶、その一瞬の光芒が眼前に浮かんできそうだ。名作である。」
姜 尚中
Political Scientist
「もはや言葉にすらできぬ過酷な日常を現実として生きた/生き続ける女性がいる。」
藤沢 周
Author
「世界が抱える矛盾を独自の視点で描ききった秀作。」
堀川 惠子
Non-fiction Writer
「秘密警察も移民となったシリア人も政府軍兵士もイラン軍兵士も, すべて等身大の人間として描かれている。」
森 達也
Film Director
※五十音順
2025年11月 紀伊國屋書店 新宿本店
長い年月をかけてシリアの家族と歩み、文字の隅々にまで祈りを込めて綴った言葉たちが、ようやく一冊の形となりました。
「行ってらっしゃい。大事にされるんだよ」。
著者が心の中でそう声をかけたその日から、この物語はあなたの手元へと届く準備を整えています。
1982年秋田県生まれ。2006年、世界第2の高峰K2に日本人女性として初登頂し、植村直己冒険賞を受賞。その後、シリア沙漠の遊牧民や難民の取材を開始。
2013年にシリア人男性と結婚。自身の家族を含む「故郷を失った人々」の姿を記録し続ける。『人間の土地へ』で第8回山本美香記念国際ジャーナリスト賞受賞。
Date 2026年1月30日(金) 19:30~
Place 八王子市生涯学習センター(クリエイトホール)
Fee 500円
難民となること、故郷を失うこと。
遠い国の出来事ではなく、「人間」の物語として。
あなたの本棚に、彼らの居場所を作っていただけたら幸いです。
全国の書店・オンラインストアにて発売中