〜トルコ南部オスマニエにて〜
シリア難民としてトルコで4年近くを過ごし、昨年5月末に86歳で亡くなった義父ガーセム。昨年、亡くなる2、3日前に握手をしてお別れしてから、その死はあまりにも突然のことでした。
オスマニエに到着し、まず向かったのが、郊外の丘陵地にあるガーセムのお墓です。ここは比較的お墓代が安価な公営墓地で、シリア人のお墓も増えつつあるとのこと。なるほど、トルコ語に混じって、アラビア語が刻まれた新しいお墓があちこちに作られていました。
イスラム教では、人が亡くなったら24時間以内に地中に埋葬しなければいけません。訃報が届いたらすぐに、近親者や友人などが故人の家に集まり、故人を埋葬するための準備が行われます。そして故人の身体を白い布でくるみ、良い香りの香水をふって、地中2メートル近くに掘られた穴に土葬します。
穴を掘ったり埋めるのは故人の近親者の役割で、特に遺体の上に最初に土をかぶせるのは故人に最も近い男性(故人の息子など)が行います。
穴を埋めた上には一段高く石を積んで囲い、誰かが上を踏んだり歩いたりしないよう、故人に敬意を払います。オスマニエのほとんどのお墓では、石の囲いの内側を花壇のようにして、花を植えていました。
日本でもお墓参りではお墓に水をかけますが、イスラム教でも同じです。故人を思い出しながら、お墓にたっぷりと水をかけます。ただし日本のように線香をあげたり、供物を供えたりはしません。
夫の兄によると、一週間に一度の頻度でお墓参りに来ているそう。亡くなった故人を悼み、死後もその冥福を祈る姿は、例え宗教が違えど、人間は皆共通なのだと改めて思いました。
ガーセムの面影を感じながら、彼が残したものをたどる取材がこれから始まります。
(2022年7月19日)