写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました!

2026年1月10日、写真展『The Homeland 』の会場にてウード演奏家の常味裕司さんをゲストにお招きし、ギャラリートークを行いました。

こちらは、12月20日に行われたギャラリートーク(ゲスト:ジャーナリスト 安田純平さん)に続き、異なる切り口からシリアに触れるための試みです。今回は常味裕司さんをゲストにお迎えし、音楽という文化面から、シリアやアラブ世界に触れました。

image 1 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました! 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました!

(常味さんのウードの演奏に合わせ、「カエルの歌」を歌う。アラブ音楽ということで階調を少しずつ変え、「マカーム」を効かせることで、ものすごく雰囲気のある「カエルの歌」に。撮影:小原直史様)

ウード演奏家の常味裕司さんは、日本におけるウードの第一人者としてだけでなく、アラブ世界においてもウード奏者として名を知られているそうです(と、知人のアラブ人から聞きました。素晴らしいです!)。

常味さんはスーダンでウードの演奏を学び、1989年からはチュニジアで、アラブ世界を代表するウード奏者、アリ・スリティ氏に師事します。2010年にはシリアのアレッポにて学んだ経験も(シリアが内戦状態になっていく直前ですね)。

◼️アラブ音楽とは

中東から北アフリカにかけての地域で育まれたアラブ音楽には、西洋音楽とは異なる独自の理論や美学があるとされます。

最大の特徴とされるのが「マカーム(Maqam)」と呼ばれる旋法体系で、西洋音楽の「ドレミ」の間にある、さらに細かい音(四分音など)を使い分けます。それぞれのマカームには、喜び、悲しみ、誇りなどの感情が結びついているとされ、奏者は即興で、雰囲気を膨らませていくとされます。

ギャラリートークではまず、日本では誰もが知っている「カエルの歌」を皆で歌いました。

その後で、少しずつマカームを変化させた「カエルの歌」を、ウードの音色に合わせて歌いました。あら不思議!マカームの音階が上がるにつれ、全く違う「カエルの歌」になるのでした。

◼️アラブ音楽を象徴する楽器、ウード

アラブ音楽を代表する楽器ウード は、アラブ世界では「楽器の王様」と呼ばれます。ギターやマンドリン、日本の琵琶にあるような、音程を固定するための「フレット(柱)」がないため、西洋のドレミの間にある「中間の音」を自在に出すことができるそうです。

アラビア語の「アル・ウード」は「木」という意味。その名の通り、木材を組み合わせて作られています。

ウードは、シルクロードを通じて東西の音楽文化に大きな影響を与え、9世紀頃にイスラム圏からスペインなどへ伝わり、「リュート(Lute)」へと進化しました。中国を経て日本に伝わったものが「琵琶」の祖先とされているそうです。

image 8 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました! 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました!

(ウードのほか、代表的なアラブの楽器を紹介する常味さん。タンバリンもアラブが起源とのこと)

◼️常味さんのウードの演奏

常味さんが一曲目に演奏したのは、「ランマー・バーダー・ヤタソンナー」。この曲は、アラブ世界で大変有名な古典曲です。曲名は、「あの人がしなやかに現れたとき」という意味とのこと。歌詞は、愛する人の美しさと、そのしなやかに歩く姿に心を奪われる様子を情熱的に歌っているそうです。この曲が作られたのは、14世紀頃のアラブ・アンダルス時代(現在のスペイン南部アンダルシア地方をイスラム勢力が統治していた時代)だそうです。

その後も常味さんのお話を交えながら、ウードの演奏が続きました。

ウードの音色には独特の深みがあり、耳を傾けていると、とても遠いどこかへ、記憶の奥深くへと誘われているような心地になりました。ずっと聴いていたいと感じる、心の中に海が広がっていくような旋律でした。

そうした常味さんの演奏の素晴らしさもさることながら、会場にいらっしゃったシリア人の方々にも(小松の無茶振りで)マイクを回させていただき、いきなり「ランマー・バーダー・ヤタソンナー」を歌っていただいたり、シリア人としての視点からお話もお聞きできたことが大変素晴らしい機会でした。

image 2 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました! 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました!

(客席にシリア人の男性たちがいるのを発見し、思わずマイクをたくさん回し、無茶振りをする小松。皆様、突然すみませんでした!)

アレッポ出身のヌールさんは、演奏を聞き、「故郷にいるような気持ちになった」と語り、故郷のアレッポの古い街並みの小さな通りで、ウードの音色が聞こえてきたという思い出を話して下さいました。

同じくシリア出身のハーリドさんは、お父さんがウードを持っており、小さい頃、よく弾いてくれたことを覚えているという、内戦前の日常の記憶をお話くださいました。かつて日常に音楽が結びついていた、内戦前の豊かな故郷の記憶を、そこに感じました。

シリアと聞けば、多くの人は内戦や難民、テロなどを連想することが多いと思います。しかしシリアには、音楽や踊りなど、世界に誇る大変豊かな文化があります。

だからこそギャラリートークでは、内戦や難民だけではない、シリアの文化的な背景についても皆様に触れていただきたかったわけですが、常味さんの心震えるような演奏と、シリア人の皆様の生の声によって、まさにそれが体現できたように思いました。

今回もギャラリートークへの参加者は、満員御礼を超過した会場が人で埋め尽くされるほどの約60人ほどの皆様にご参加いただき、反響の大きさを感じました。

image 9 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました! 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました!

(多くの皆様にお越しいただきました!満員御礼をはるかに超過!皆様、ご来場、どうもありがとうございました!)

そして素晴らしかったのは、ギャラリートークが終わった後も多くの皆様が会場に残り、ギャラリー閉館までガヤガヤと、シリア人の皆様や参加した皆様との輪が広がっておしゃべりが続いていたことでした。互いの連絡先を交換したり、先週シリアに一時帰国してきたばかりというシリア人からアラブ菓子をつまませていただいたり。

ウードの演奏や、シリア人の皆様との出会いを通し、「もっとアラブ音楽を知りたくなった!」、 「シリアに行ってみたいと思った!」という方が何人もいらっしゃり、そのきっかけのひとつとなったことが大変嬉しいことでした。

そうしたシリアでは、今も情勢が不安定であり、北部のアレッポにてクルド軍と暫定政府軍の衝突も報道されたばかりです。それでも、アサド政権崩壊とともに多くの難民や避難民が故郷へと戻り、失った日常を取り戻そうとしています。

人々は、過去の悲しみや対立にではなく、これからの希望や再生にこそ生きようとしています。その姿を写真家として見つめ続けたいと、心を新たにしました。

ギャラリートークにて素晴らしい演奏をお聞かせいただきました常味裕司さん、ご参加いただきましたたくさんの皆様、どうもありがとうございました。

image 10 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました! 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました!

(常味さんのウードの演奏に、心が遠いどこかに誘われるような時間。)

image 11 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました! 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました!

(常味裕司さん、素晴らしい演奏をいただきどうもありがとうございました!常味さん曰く、ウードを習い始めたりと、アラブ音楽に興味のある若い世代が増えているとのこと。嬉しいですね。)

image 12 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました! 写真展ギャラリートークにて、常味裕司さんのウードの演奏をお聞きしました!

(ギャラリートーク中、突然マイクを回してお話をお聞かせいただきましたシリア人の皆様。皆20代の若い世代。これからのシリアを担っていく一人となっていくことでしょう!応援しています!)

◼️アラブ音楽、アラブの文化にもっと親しみたい方はこちらをご覧ください!

▼ウード演奏家 常味裕司さんホームページ

https://www.oud.jp

▼常味裕司さんの直近のイベント情報

▼常味裕司さんのCDのご購入はこちらより!常味さんの活動の応援を宜しくお願いします!

https://www.oud.jp

▼魅惑の味!アラブ菓子はこちらからお求めいただけます

・「アラブ・マグレブ菓子専門店【ChezOumH】」

https://chezoumh.theshop.jp

・FAR EAST BAZAAR

https://fareastbazaar.net/pages/arabian-sweets?srsltid=AfmBOopdLBj1eBhdUGKU9Q_DcSED8cVTsulMcBtR9L5lm-Q1WaDxSwBl

▼シリアを含め、アラブ世界が直面している現実をより深く知るためのドキュメンタリー作品はこちらより!

・アジアンドキュメンタリーズ

https://asiandocs.co.jp