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写真展「あなたは ここにいた」が終了しました!

一夜の美しい夢のような時間

6月13日〜24日開催の2年ぶりの写真展「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷パルミラ〜」。早いもので、10日間の会期が終了いたしました。

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企画から準備まで、一夜の美しい夢のような、あっという間の時間でした。

会期中は10時から18時まで毎日ギャラリーに立ち、多くの皆様とお会いし、お話させていただいた忘れられない時間でした。全日、本当にたくさんの皆様にご来場いただきました。皆様、どうもありがとうございました。

今回の写真展は、2021年に故郷に帰還することなく亡くなった義父ガーセムへの私なりの追悼であり、2022年に行った11年ぶりのパルミラ取材の記録であり、そしてここ数年のシリア難民の取材の集大成でした。

改めて、発表の場をいただいたOM SYSTEM GALLARY 様、受付や搬入、搬出のお手伝いを快くお手伝いいただいた皆様、そして日頃から活動を応援し、支えてくださっている多くの皆様に心から感謝いたします。本当にどうもありがとうございます。多くの皆様に支えていただき、活動が成り立っております。

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(いつも学ばせていただいている探検家、人類学者、外科医の関野吉晴さんと)

そして、慌ただしい準備期間や、会期中の遅い帰宅のなか、ほぼ家庭崩壊気味になりながらも我慢して応援してくれた(?)私の家族。

会期中は洗濯が回らず、掃除が出来ず、だんだん家の中がカオスになっていきましたが、子供たちは母の仕事を理解し(実際は、うるさい母がいなくてノンビリしたかも)、一人で宿題をし(たりしなかったり)、シャワーを浴び(たり浴びなかったり)、寝ることを覚えました(毎日かなり夜更かししてハッスルしました)。洗濯が回っていなかったのとあちこちに脱ぎ散らかすせいで、子供たちはだんだん靴下が片っぽしかなくなり、左右違う靴下を履いて学校や保育園に行っていましたが、そんなひとつひとつに、写真展による日常の変化をしみじみと感じるのでした。

さて、写真展の終了と共に、すでに次なる作品への製作の旅路が始まっています。次の作品発表の写真展は、おそらく2年〜3年後になるかと思いますが、より良い取材と発表ができるよう、日々努力と自省あるのみです。

シリア人の妻として、シリア難民をテーマとする写真家として、不安定な人生を自分で選び取りました。これからも迷ったり葛藤しながらも信念を持って、未知の世界に飛び込んでいきたいと思います。

写真展「あなたは ここにいた」の開催を応援いただき、皆様、どうもありがとうございました。また次なる発表の場で、皆様と会場でお会いできますその日が楽しみです。

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(写真展の最終日前日、夫が子供たちを連れて来てくれました。子供たちは、会場に入るなり写真をほとんど見ずに会場を走り回り、プロレスをして取っ組み合い、スマホでサッカーの試合の動画を見てくつろいでおり、私は「そこでプロレスしないで!」「走るな〜!!」とだんだん鬼婆と化しました。本当は、夫が自分のかつての実家の写真を見て、どのような反応をするのかを観察し、撮影したかったのですが、会場で走り回る子供を追いかけてその機を逃してしまいました。無念!子連れ取材のパニックを思い出しました。子供が4人いますが、二人はシリア人ジャーナリストのナジーブ・エルカシュさんの息子たちです。4人でギャラリーを自由に闊歩しておりました。写真中央がナジーブさん、右端が夫です)

どんな写真展を目指したのか

写真展の開催にあたり、どんな写真展にしたいのか、私は手帳にこう書き記していました。

・難民とはどういう存在なのか。その問いかけがあること。

・私自身の視点、立場が反映されていること(何故私がこのテーマを撮ったのか、作者の物語もまた、反映されていること)

・そこに生きる人々の、人間性や喜怒哀楽、唯一無二の独自のストーリーが伝わってくること。

・(スマホなどで大量の写真があふれる現代において)限られた写真で伝えることがどういうことか、その問いかけがあること。

・答えを示すのではなく、見る者にメッセージを伝え、ただ静かに問う。答えは見る者それぞれが見出すもの、というスタンスで。

ただ写真を見るだけなら、スマートフォンでもいくらでも見られる時代です。しかしあえて、ギャラリーという空間で展示をし、そこでじっくり見ていただくことで得られる〝なにか〟があること。そのために、展示にもスマホでのスライドショーやスクリーンでの動画上映、具体的なモノの展示など、〝写真の見せ方〟を工夫したり、謎を含めることで多くの仕掛けを用意しました。

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(会場では、パンフレットと共に「写真を読み解く」という紙を配布しました。明確な答えはそこにありませんが、それぞれに、作品の背景を考え、想像を膨らませていただくきっかけになればとの思いからでした。なかには、こんなにメモを書かれるお客さまも!)

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写真展の構成

以下は写真展の写真構成です。

ギャラリーには四つの壁面があります。入口を入って左側から時計回りに、A面、B面、C面、D面とし、以下のように写真の配置の図面を作りました。

図面の写真の部分は、紙の大きさの都合で2段になっていますが、実際はくっついた展示です。

●A面

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「写真展の紹介文」「ガーセムとの思い出」

どのような写真展であるかを示し、お客さまを作品の世界観に導入する入口部分。かつてのシリアでの暮らしに触れ、義父ガーセムの死、何故パルミラに向かうことになったのかを示す。かつての、明るく活気に満ちたシリアでの暮らしは、スマホでのスライドショー機能を使って表示。今回の撮影写真と展示法を分けることで区別を図る。

「燃やされた故郷パルミラ」

パルミラが、どのように内戦に巻き込まれていったのか、そこで何が起きたのかを示す。住民のほとんどが街を去った現在のパルミラの、「影のような部分」を写真から彷彿とさせる。B面に続く。

●B面

B面 5MB scaled 写真展「あなたは ここにいた」が終了しました! 写真展「あなたは ここにいた」が終了しました!

A面に続く。

「ガーセムの家」

ガーセムが帰りたいと願い続けたパルミラ。そこにひっそりと残されていたガーセムの家の現状。静寂、荒廃、日常の喪失、思い出の蓄積を、そこに残されたモノから示す。また写真だけでなく、実際にガーセムの家から持参した砕けた床石、ぼろ切れなども展示。またカメラ撮影が許されず、スマホで撮影した写真はスマホでのスライドショーで示す。

●C面

C面 5MB scaled 写真展「あなたは ここにいた」が終了しました! 写真展「あなたは ここにいた」が終了しました!

「難民たちのポートレート」

パルミラから逃れ、トルコで避難生活を送る難民たちのポートレート。パルミラというルーツが、彼らとどのように結びついているのかを語ってもらい、エピソードを紹介。

●D面

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「難民たちの日常風景」

トルコに暮らすパルミラ出身の難民たちが、どのように故郷との繋がりをもって暮らしているのかを、さまざまな観点から示したもの。

解説文には、以下の言葉を載せた。

「この10年ほど、シリア難民の取材を続け、次第に理解したことがある。それは、パルミラで生まれ育った者の〝故郷〟の概念だ。彼らにとっての〝故郷〟とは、雄大な沙漠や美しいオアシスなどのパルミラの景観ではない。淡々とした、しかし満たされた日常の積み重ねがそこにあったという事実であり、そうした日常を当たり前のように共に過ごした、愛する者たちの存在そのもの。それが彼らにとっての〝故郷〟なのである」

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(左の壁がA面、正面がB面)

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(C面)

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(D面)

さて、写真展が終わっても、ゆっくり休んでいる暇はなさそうです。写真展から波及した嬉しい余波は広がっていくばかりで、ご来場いただいた方々やカンパを下さった方々へのお礼をしたり、新しいお仕事のお話を進めたり、ここからが次なる取材や発表への新しい始まりです。目指す表現の道へ、これからも信念をもって歩き続けていきます。

皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

小松由佳

〜写真展5日目が終了。心境の変化と写真家の先輩からの学び〜

本日は写真展が始まって5日目でした。会期が24日月曜日までですので(火曜水曜はギャラリー休)、写真展も半分過ぎたことになります。私は全日会場で10時から18時まで在廊しており、あっという間に毎日が過ぎております。

毎日、本当にたくさんの皆様にお越しいただいております。嬉しく、恐縮な限りです。皆様、どうもありがとうございます。

早く次に行かねば

写真展が始まって2日目までは、発表の場がある喜びと充実感でいっぱいでした。しかし3日目にはその高揚感が去り、また違った心境へと変化しています。

写真展はギャラリーという空間のなかで、それも時間をかけて自分の写真や演出と対峙することです。それゆえ、そこに立ち、目を見開くことで、自分の表現に何が足りないのかがだんだんと明確になってきました。まだはっきりと言語化ができていませんが、もっと突き抜けたもの、独自の視点、表現法、そうしたものの改革が必要だと感じています。

とにかく、まだまだ足りない、と思えるのです。前からそう思ってはいたのですが、写真展をやり、その足りなさをさらに実感中です。すでに心は次の制作へ向かっています。早く次に行かねば。そんな心境です。

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(15日土曜日のギャラリートークの様子。シリアに向かうことにしたタイミングや、秘密警察の監視下での危険で困難な取材についてお話しました。次回ギャラリートークは22日土曜日です)

展示についてのお客様からの感想

ご来場いただいた皆様から、沢山のご感想もいただいております。シリアやパルミラを訪れたことのあるお客様も多く、現在のパルミラの写真を見て、涙を流される方も。

また、「あなたは ここにいた」という写真展のタイトルですが、そこに「ING」がついているのではないかと感じる、というご意見などもありました。そんなたくさんのご意見があって、大変嬉しいです。

今回の展示は、パルミラというある難民の故郷をめぐるストーリーです。そして彼らがかつてそこにいたということを、写真を見た一人一人がどのように捉えるのか、それは全く自由で、むしろ私はそれを、見る人一人一人に委ねたいと思っています。

「あなたは ここにいた」ではなく、「あなたは ここにいる」ではないか。

「あなたは ここにいるし、ここにいない」ではないか。

「あなたは ここにい続ける」ではないか。

そうそう、どれもその通り。故郷を失うこと、難民となることについて、それぞれが独自のイメージでなにか本質的なものに触れてほしい。それこそが、この展示での私の願いです。

以下は、写真展会場で配布している資料です。その名も「 写真を読み解く 」。展示に目を凝らし、写真に込められた作者からのメッセージを想像いただいています。そこに明確な答えはありません。写真の枠の外の世界を想像していただくことが狙いです。

30年前のパルミラの写真をいただき、感動しました!

「もうこの写真、もう捨てようと思っていたから」と、30年近く前のパルミラでの写真をお客様にいただきました。1993年9月、と表示された写真。ツアーコンダクターだった、というお客様が、パルミラの遺跡や街で撮影した在りし日の写真です。

2015年に過激派組織ISによって破壊される以前の荘厳な遺跡の姿、道を歩く女性たちの時代を感じる服装、砂漠から昇る今も変わらないオレンジ色の太陽。全てが、フィルムカメラで丁寧に撮影されたもので、80年代、90年代のあの時代の匂いがプンプンする、うっとりする写真でした。

大変に貴重なものをいただいたことに恐縮しつつ、これらの写真は、会場中央の机にて展示させていただいております。

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(お客様からいただいた、時代を感じる、しかし素晴らしい写真の数々。宝物にします)

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写真家、石川武志さんからの学び

いつもお世話になっている写真家の石川武志さんがご来場くださり、大変大きな学びをくださいました。

石川さんは、あのユージン・スミス(*)の助手として、共に水俣を撮影したことでも知られ、また長年インドなどでの民族、祭り、宗教などを撮影してきた写真家です。最近では、今回の私の写真展と同じ会場で、一年前に写真展「MUMBAI HIJRAS(ムンバイ・ヒジュラ)」(*)を開催されていました。

*ユージン・スミス https://ja.wikipedia.org/wiki/ユージン・スミス

*石川武志さんによる写真展「MUMBAI HIJRAS(ムンバイ・ヒジュラ)」 ↓

(石川武志氏)

1950年愛媛県生まれ。1971~74年ユージン・スミスのアシスタントとして水俣を取材。1975年渡米、以後フリーランスとなる。1978年シルクロードの取材を期にアジアの祭りや民族、宗教、遺跡などを取材。1980年インドでガンジス河巡礼の取材を開始。1982年インドのトランスジェンダー社会「ヒジュラ」の取材を開始。1987年ハイチのブードーやブラジルのカンドブレなどを取材。2008年再び水俣の取材を開始。

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(石川武志さん)

その石川さんから、

「時代や媒体を越えて、作品が一人歩きするような一枚を撮りなさい」

とお話いただきました。例えば有名なスティーブ・マッカリーの写真「アフガニスタンの少女」(*)のように、素晴らしい作品は一人歩きして残っていく。そういう一枚を撮りなさい、と。

*「アフガニスタンの少女」

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20131001/367287/?ST=m_column

また、柱となる写真はどれかを示し、それを効果的に見せることについてもお話しいただきました。「ユージンスミスも、それをものすごく意識していた」、と。

今回の写真展では、自分なりに〝柱となる写真〟を意識はしていたものの、まだまだ足りないと思いました。石川さんがおっしゃる、〝一人歩きしていく素晴らしい一枚〟はそこにはない、と。

「本当にいい写真は、一人歩きして残っていくから」。その石川さんの言葉が心に響きました。この言葉を手帳に書き留めた私は、そうした写真を撮ろう、と思いを新たにしました。

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(この写真展は、子どもたちにこそ見てほしい展示です。知人の子どもに、展示物についてお話ししました。「これは何かな〜?」「どうしてこうなってしまったのかな〜?」)

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(子どもたちは写真よりも、目の前にある「モノ」に興味津々です。是非、触れて、考えてみよう。感じてみよう)

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(フォトジャーナリストの桃井和馬さんが、二人の子どもを連れて写真展にご来場くださいました)

(2024年6月17日)

240614低画素 1 写真展がついに始まりました! 写真展がついに始まりました!

写真展がついに始まりました!

写真展「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」が14日から始まりました!搬入日から、あっという間に時間が流れております!

2021年12月に、富士フォトギャラリー銀座様にて行った写真展『シリア難民 母と子の肖像』以来、約2年ぶりの写真展となります。写真点数も60点ほど用意し、経済的にも、エネルギー的にも全力投球しました。改めて、写真展を開催させていただく大変さと、発表の場がある喜びを満喫しています。

今回の写真展は、2022年に11年ぶりに行ったシリア中部のパルミラ取材の記録でもあり、2021年に帰郷を果たせずに亡くなった義父ガーセムへの鎮魂の表現でもあります。現地では、秘密警察の監視下に常に置かれたり、自宅軟禁に遭ったりと危険な思いもしました。こうしたパルミラ取材が、写真展としてしっかり発表できるということに充実感と安堵感を感じております。やっと、ここまで来れた、という思いです。ここまで応援いただき、支えてくださった沢山の皆様に感謝しております。どうもありがとうございます。

ただ、今回のようなメーカーギャラリー様での写真展は、私の場合、会場費や写真パネル制作費、宣伝費などを合わせ、経費が100万円以上かかる一大プロジェクトです。

経済的な事情から毎年の開催は難しく、またここしばらくは取材により力を入れてきたこともあり、今回は2年ぶりの本格的な写真展となります。

次の展示は、恐らくまた2年後になりそうですので、この展示では、是非多くの皆様にご来場いただけますと嬉しいです。

本日は開催3日目。一昨日も昨日も、本当に沢山の皆様にご来場いただきました。皆様、どうもありがとうございます。日々、発表の場に立つことの喜びと充実感とを噛み締めております。

展示をしてみると、新たにさまざまな課題が見えてきました。

伝えたいことが、展示のなかに示されているか。そのうえで、見る側に「委ねる」ことができているか。この「委ねる」という部分がとても大事です。写真家の役割は、答えを示すのではなく、あくまで問いを投げかけるこただと思っているからです。

目指す表現に向かい、展示が始まっても、終了する瞬間まで模索は続いていきます。ですので写真展の完成は、写真展が終わる瞬間です。

改めて、空間の中で表現を作り上げる写真展の奥深さを感じております。いかに撮り、いかに写真に込められたメッセージを発していくか。今後も学びがあるのみです。

本日の夕方、ちょうど来日中のシリア人女性作家であり、活動家のサマル・ヤズベク氏がご来場下さいました。サマル氏は『無の国の門』という、世界14カ国で翻訳されたノンフィクション本を執筆した作家として知られています。

すでに作家として知られていたサマル氏は、2011年に始まったシリア反体制運動で、反体制・反アサド政権の立場をとり、逮捕・拘束を経て、同年夏にシリアを脱出しました。

その後も2012年8月から2013年7月まで、3度にわたって祖国に戻り、兵士から女性や子供まで、反アサド政権の立場にあるさまざまな人々の声を集め、その体験を本に書き綴っていきます。

こうして出版された『無の国の門』は、世界14カ国で翻訳され、シリアで起きている真実を世界に知らしめることに繋がりました。現在はパリに暮らし、シリアの女性を支援する活動も続けています。

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○サマル・ヤズベク氏
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A4%E3%82%BA%E3%83%99%E3%82%AF

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○『無の国の門〜引き裂かれた祖国シリアへの旅〜』
(以下、白水社のサイトから引用)

https://www.hakusuisha.co.jp/smp/book/b498044.html

〜挫折をいかに理解し、未来へつなげていくか
記録を通じて内戦の過酷な現実と向き合う〜

祖国を逃れた作家が一時帰還し、反体制派の人々の苦悩と挫折に耳を傾ける。記録する行為を通じて内戦という過酷な現実と向き合う労作。

内戦下の祖国シリアに一時帰還した作家が、絶え間ない爆撃の下、反体制派の人々の間で暮らしながら、それぞれの苦悩と挫折に耳を傾けた1年間の記録。語り伝えることを通じて、内戦の過酷な現実と向き合う、世界16か国で翻訳された話題作。

アサド大統領と同じくイスラーム教アラウィー派に属する一族の出身である著者は、2011年以降、一貫して反アサド政権の立場をとり、逮捕・拘束を経て同年夏にシリアを脱出した。本書は、2012年8月から2013年7月まで、3度にわたって祖国に戻り、兵士から女性や子供まで、反アサド政権の立場にあるさまざまな人々の声を集め、その体験を書き綴ったものである。
拠点としたのはシリア北西部のイドリブ県サラーキブ市で、住民である協力者一家の庇護を受けて取材を進めた。証言者の数が増えていくと同時に戦況は変化し、協力者一家の大半は出国を余儀なくされていく。
小説家、ジャーナリスト、編集者として活躍するかたわら、著者は女性の自立や子供の教育を支援するNPO団体を設立し、活動を続けている。近年のシリアを見据える新しい世代の特色を鮮やかに示すと同時に、内戦下で生きる市井の人々の声を拾い上げた記録文学の白眉。

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サマル氏は、シリアでも大変著名な作家とのこと。私の夫もサマル氏を知っており、同じシリア人としてのメッセージを託されました。

「シリアの人々の声を、世界に伝えてくれてありがとうございます」

そのメッセージを、私は大事にサマル氏に伝えました。サマル氏は、「ありがとう。あなたをハグしてもいい?」と言い、ハグして下さいました。長い間、誰かとハグしたことがないことに気づいた私でした。

サマル氏に、お聞きしたいことがありましたが、その答えを私はすでに知っているようにも感じました。

「報道の光が当たらないシリア問題を、どのように見つめ続け、足を運び続けたら良いでしょうか」。

それはただ、信念を持って続けていくだけよ。そうサマルさんが答えるだろうと、私は分かっていました。とにかく思いを持ってひたすら続けていくだけ。その先に道は開けるのです。私も撮り続けていこう。さしたる深い話はできませんでしたが、サマルさんにお会いし、撮り続けようという思いがまた新たになりました。

さて、本日15日は14:00からギャラリートークがございます。24日の写真展終了日まで、会場にて毎日在廊予定です。皆様、どうぞよろしくお願いします。

〈皆様へ〉
写真展開催にあたり、大変恐縮ながらカンパを集めさせていただくことにしました。写真展には膨大な経費がかかります。今後も取材と発表を継続してより良い形で行っていけるよう、是非応援をよろしくお願いします。

▼写真展 経費の応援カンパをよろしくお願いします

〈写真展 応援カンパお振込み先〉

三井住友銀行
八王子支店
普通
8495661
コマツユカ

大変恐縮です。どうぞ宜しくお願いします。
小松由佳

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写真展『あなたは ここにいた〜燃やされた故郷、パルミラ〜』は、壁の四面を使い、ストーリーが組まれています。

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こちらでは、トルコで難民として暮らすパルミラ出身者のポートレートを展示しています。彼らがどのように故郷と繋がって生きているのかを聞きました。

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夫のパルミラの実家から持参した、爆撃で破壊された床や壁、天井の破片を展示しています。写真だけでなく、実体を見て触れることで、作品の世界観により入っていただけたらと思います。

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パルミラでの取材では、荒廃した夫の実家を訪ね、残置物を撮影しました。私はそこで、驚くべきものを見つけるのです。

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写真展の終了後、サマルさんらと食事をご一緒させていただきました。ひとつひとつの言葉に力があるサマルさん。私も撮り続けていこう、と改めて決意した夜でした。

小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日

2024年6月13日(木)~24日(月)まで、新宿駅徒歩5分のOM SYSTEM GALLERY 様(旧 オリンパスギャラリー東京 様です)にて、写真展を開催いたします。

この二年間は、膨大な経費がかかる取材費と写真展開催費のやりくりに苦労し、現地取材をより優先して行ってきました。今回は、久々の写真展となります。

現在の私の全てを投入した、渾身の写真展です。多くの皆様にご来場いただけましたら大変嬉しいです。

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小松由佳 写真展 「 あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜 」

▼会期

2024年6月13日(木)〜 6月24日(月)  10:00〜18:00

入場無料 休館日:2024年6月18日(火)・19日(水)  *最終日は15:00まで

▼会場

OM SYSTEM GALLERY(新宿駅西口から徒歩5分 / 旧 オリンパスギャラリー東京)

(〒160-0023 東京都新宿区西新宿 1-24-1 エステック情報ビル B1F) 電話番号:03-5909-0190

https://note.jp.omsystem.com/n/n9d19b51f200e

▼ギャラリートーク

6月15日(土)14:00〜15:00

6月22日(土)14:00〜15:00

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展示内容は、2022年夏、11年ぶりにシリアを取材し、空爆で破壊された夫の故郷、シリア中部のパルミラを撮影した記録です。大変に苦労しながらシリアに入国し、取材した写真であり、私としてもかつてないほど思い入れの強い作品群です。

夫の故郷である破壊されたパルミラと、そこを離れざるをえなかった難民たちの姿を通し、難民になるということ、故郷を失うということがどういうことなのかを、皆様と一緒に考えることができたら、と思います。

この展示は、答えを示す展示ではなく、問いを投げかける、というコンセプトです。写真から、それぞれに何かを感じていただけたら作家冥利に尽きます。

会期中、私は全日在廊しております。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

小松由佳

<ハガキサイズ チラシ>

komatsuyukahagaki omote 小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日 小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日
komatsuyukahagaki ura 小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日 小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日

<A4サイズ チラシ>

komatsuyuka omote scaled 小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日 小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日
komatsuyuka ura scaled 小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日 小松由佳 写真展 「あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜」 2024年6月13日〜6月24日

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小松由佳 写真展「 あなたは ここにいた 〜燃やされた故郷、パルミラ〜 」

シリア中部のオアシス都市パルミラ。古代から東西を結ぶ交易の要衝として繁栄し、郊外には豊かな緑をたたえたナツメヤシの木々が涼しい木陰をつくる。その美しさは「砂漠の薔薇」と謳われてきた。しかし2011年以降、シリアは内戦状態に突入。四方を砂漠に囲まれたパルミラは、2015年にイスラム過激派組織ISに占領され、政府軍による激しい空爆にさらされた。市街地の8割近くが、このとき破壊された。

パルミラは私の夫の故郷でもある。この12年、私はトルコ南部で避難生活を送るパルミラ出身者のコミュニティを訪れ、多くのシリア難民を取材している。シリア情勢は今も不安定で、彼らが故郷へ帰還する見通しは立たない。こうしたなかで人々は、貧困や差別、失業、先の見えない不安などに直面しながらも、異郷に根付こうとする努力を続けている。こうした彼らの心の根幹にあるのは、パルミラという自らのルーツあり、そこで過ごした幸福な日々の記憶だ。

そのパルミラを、彼らは何故、離れざるをえなかったのか。そこは今、どうなっているのか。

難民が生まれた原点の地に立つため、私はパルミラに向かった。

(2024年5月8日)