オンライン対談「イスラエル市民から見たハマスとガザ」2023年10月27日収録 / イスラエル市民H氏 × フォトグラファー小松由佳

はじめに

2023年10月7日から始まったガザのハマスとイスラエルとの衝突に、世界が注目しています。先日はガザの人々の現状について、ガザ取材の長いジャーナリスト、古居みずえさんにお聞きしました。そのうえで今回は、イスラエル側の視点からお話をお聞きしたいと、イスラエル在住18年、イスラエル市民権を持つ日本人男性、平林裕介さんに対談をいただきました。

平林さんとの出会いは2008年。共通の知人である作家の西木正明さんからのご紹介で、イスラエルを旅した際、イスラエル中部のテルアビブのご自宅で泊めていただきました。その当時5歳ほどだったとても可愛かった息子さんが、現在は成長して兵役中であり、ガザに侵攻するらしいとの報も聞いており、衝撃を受けておりました。今回のハマス侵攻後は、以前にもましてテルアビブにミサイルが飛んでくるらしく、そのような大変な時にオンライン対談に応じてくださいました。

「イスラエル側の言い分が一人にでも伝わり、少しでも考えるきっかけになったら嬉しいです。多くの人に私たちの側のストーリーを知ってほしいというのが願いです」とのことで、講師謝礼も不要であるし、多くの方に見ていただけるよう動画視聴料も不要にしてほしいとのことでした。そのため当初、この有料会員コンテンツ内での公開のみの予定でしたが、平林さんの希望により、対談は一般公開・無料視聴可能とさせていただきました。

また発言によって本人がSNSなどでの中傷に晒されないよう、どこまでプライバシー保護をするかのご相談も、「名前等は伏せなくてもいいです。ミサイルやテロリストに比べれば、ネット中傷は怖くありません」とのこと。”自分たちの思いを広く知ってほしい”という覚悟が伝わってきました。

テルアビブでは夕方、毎日のようにハマスからミサイルが飛んでくると聞いてはいましたが、収録中にもミサイルが飛んできました。平林さんは一時避難し、その後戻りました。大変な状況下で(平林さんにとっては日常とのこと)対談下さったことに感謝するとともに、実に色々と考えさせられるお話でした。

今回のハマスによる越境や民間人の殺戮が、イスラエル市民にはどう映ったのか。人々はどのような日常を送り、ガザやハマスに対して何を思っているのか。ガザ側の視点だけでなく、イスラエル側の視点も考えることで、さまざまな視点から事実を考えていくことをしたいと思います。ぜひご視聴ください。

対談内容

・イスラエルに暮らす、ということ(どのような経緯でイスラエルに移住し、暮らして何年目か。どのような毎日か)

・日常として感じるパレスチナ問題(これまでパレスチナとの問題にどのような思いを持ってきたか、シェルターがあること、ミサイルがよく飛んでくる、など日常的な問題について。特にテルアビブというガザ地区の近くに住んでいることで感じることなど)。

・今回のハマスとの衝突は、イスラエル社会や、平林さんの周囲でどのように受け止められたか。兵役に行っている息子や友人とはどのような会話をしたか。現地の雰囲気は?また、今回のハマスによる攻撃や誘拐、民間人の殺害の意図をどのように考えているか(イスラエルとサウジアラビアとの和平交渉によって、ガザの問題も和平の道で行われることに反発しての攻撃だった、など)。

・イスラエル軍によるガザへの地上進行は近いとされ、ガザ北部地区から市民が南部に避難するように言われている。こうした中でも南部へのイスラエル軍による空爆が起きているが、イスラエル市民としてはこの状況をどう捉え、状況がどうなることを希望しているのか(市民への攻撃を意図しているのではなく、あくまでハマス壊滅を狙っているのだ、など、具体的な意見が知りたい)。

・ハマスという存在をどう捉えているか(ハマスとガザの人々は別として考えるべきなのか)。

・イスラエル社会の中では、アラブ系イスラエル人も社会の一員として、さまざまな職を得て一緒に暮らしている。こうしたアラブ系イスラエル人との共生がどのように行われているのか、または問題も起きているのかについて。

・現在、周辺諸国も巻き込んだ「核戦争」になるかもしれないという大変深刻な事態である。この問題が、どのような状態になることが理想と考えているのか。

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▼オンライン対談「イスラエル市民から見たハマスとガザ」2023年10月27日収録 /  イスラエル市民H氏 × フォトグラファー小松由佳

https://youtu.be/sHOZ9581xzQ

平林さんのお話から、心に残ったエピソード

・ガザのハマスから毎日のようにミサイルが飛んでくる→シェルターへ避難する。これが日常になっている。

(実際、対談中もミサイルが飛んできて、警戒アラートが鳴り避難した)

・ガザにはハマスだけではないイスラム武装グループがおり、民間人が迎合して参加しているケースが多い。「ガザの一般人=ハマス」ではないが、両者の線引きは極めて難しい。

・イスラエル軍は、ガザ北部から人々を南部に避難させた後、今後は逆に北部から南部に人々を移動させるのではないかと(イスラエルの市民間では)考えられている。

・平林さん:「とにかくガザの武装解除をしたい」→小松:「イスラエルによるガザへの同じ政策が今後も続けば、今回たとえハマスを掃討できたとしても、また同じ集団が現れるのでは?」→平林さん:「人の心を変えることは難しいが、モノの流入を制限することで物理的に武装できなくすることはできるのではないか」

・小松:「意見が噛み合わない、対話ができない相手とどう対話していけばいいのか」→平林さん「対話で解決しないという方法もあるのかもしれない」

・イスラエル在住の日本人は、日本でのパレスチナ寄りの報道のあり方に怒りや違和感を感じている。

・現在のパレスチナは、これまでのパレスチナ自身の政治選択の結果、こうなったと多くのイスラエルの市民は考えている。現状をイスラエルのせいだけにしないでほしい。

・イスラエル社会の中では、アラブ系イスラエル人と、非アラブ系イスラエル人との共生はあまり進んでいない。

・今回、ハマスに殺害されたイスラエル人の中には、アラブ系イスラエル人も40人くらい含まれていた。ハマスは、同じアラブ人(パレスチナ人)でもイスラエル領に住んでいる人は殺害する。

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▼対談いただいた平林さんが、読売新聞で紹介されていました!

https://www.yomiuri.co.jp/national/20231028-OYT1T50247/(「出動するよ」19歳の息子が戦場へ・・・イスラエル在住日本人男性「一般市民は殺さぬように」2023年12月29日)

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▼平林さんへのご質問などある方は、小松までお問合せください

「小松由佳HP有料コンテンツ」では、”これからの世界を生きるためのクリエイティブな議論ができる場”を目指しております。ぜひ今回のゲストの平林さんにご質問のある方、またはオンラインミーティングされたい方などは、小松までご連絡ください。質問されたい方が多いようでしたら、平林さんを囲んでのオンラインミーティングも企画したいと思います。

3 Replies to “オンライン対談「イスラエル市民から見たハマスとガザ」2023年10月27日収録 / イスラエル市民H氏 × フォトグラファー小松由佳”

  1. 視聴しました。日本にいると、どうしてもガザのパレスチナ人寄りの思いが強くなりがちですが、イスラエルの市民の感覚がよくわかり、目を見開かされました。ハマスからのミサイル攻撃を受けるイスラエル市民の様子がわかっただけでも、大きな収穫でした。ハマスによる虐殺の話は、ショックでした。ISに似ていると思いました。小松さんがおっしゃるように、当事者双方からの視点で見て行かないと、いわゆるバイアスのかかった捉え方になりがちですね。平林さんのお話には、いくつか違和感をもったこともありますが(例えば、ヨルダン川西岸地区の分離壁のことなどには触れられなかった)、平林さんの立場に立てば、私も同じような捉え方をするかもしれません。難しい問題ですが、これからも、双方の情報を集めながら、考え続けることが大切と痛感しました。

  2. 平林さんの、飾らない、率直な、しかし歴史や知識に裏打ちされた見方や意見、大変為になりました。古居さんと平林さんをタイミングよく紹介できて大変良かったです。ありがとうございました。僕の知っているイスラエルも新しく清潔で知的で前向きな国です。先般の古居さんの写真やお話で、隣の国がその真逆で絶望の中で生まれて育ちテロリストになる事に今更ながらショックを受けたばかりでした。国民が国を成すとすれば国民にはその国の運命を負う責任があります。決して楽ではない道を作り成功したイスラエル(平林さん)からすれば、モスラムに囚われ成功せず貧しくテロを容認するような国や国民を判官びいきする日本人の心情には付いていけないでしょうね。おっしゃられた通り先の見えない、いえ、もっと先に悪いことがありそうな時代になってしまいました。古居さんと平林さんがお互いのビデオを見られてどのような感想を持たれるか、と考えてしまいました。「命の重さ」は「死んだ人の数」ではない、と平林さんは言われていましたが、命の価値は一人一人同じと考えれば、やはりそうも言えないのではないか。憎しみの連鎖はそんな単純な数にも左右されるはずです。いずれにせよお疲れ様でした!!

    1. 平林さんと小松さんの対談とても重く受け止めました。虐殺のことなどとても衝撃強く、平林さんの怒りに納得すること多かったです。
      小松さんは小平の講演会で価値観や習慣が違っても同じ場所に居ることはできるとおっしゃっていてなるほどなと、平和な共存のためのコツを聞いたと思いましたが、相手が暴力を振るってきたら同じ場所に居ることすらできないと改めて気づきました。
      平林さんがパレスチナとの対話は先の先のまだ先のことだとおっしゃっていたのが何だかとても悲しかったです。武器がどんどん発達してAIが戦争に使われるようになって人類がこの先どうなるのか‥人間の智慧を信じていても暗澹たる気持ちに陥りました。
      平林さんの息子さんが兵役で行かれているとのこと同じ年頃の息子を持つ身として本当に切なく辛い気持ちでいっぱいです。息子さんの安全を心よりお祈りしています。また息子さんが戦場で見るものが何よりひどいものでありませんように。
      イスラエルとパレスチナの子どもたちがお互い憎み合わない世界が早く来るよう祈るばかりです。